今回はグロース株を手軽に取引できるETFとしてどんなものがあるのか、それぞれの特徴、長所、短所、結局何を購入すべきかについて解説したいと思います。ひとえにグロース株ETFといってもたくさんの銘柄があるので分析していきたいと思います。
グロース株について解説した記事は以下をご覧ください。
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コロナ禍の株式市場を牽引してきた、グロース株とは?投資するメリット、その強みと注意点とは
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グロース株アウトパフォームの要因は収穫逓増型ビジネスの隆盛
この10年はグロース株がバリュー株をアウトパフォームしてきました。その大きな要因としてテック産業が急拡大してきたことが挙げられます。テクノロジー企業は、利益を出すまでに膨大な時間と投資を必要としますが、一度利益が出始めると、その利益率は急激に高まっていく、いわゆる「収穫逓増型」のビジネスモデルです。
破壊的イノベーションによって、ビジネスのゲームチェンジャーとしてマーケットの巨大なシェアを握る、あるいは新たなマーケットを創造する。それによって莫大な利益を株主にもたらしてきました(もしくはこれからもたらすことが期待されています)。この収穫逓増型ビジネスの隆盛が、グロース株アウトパフォームの要因というわけです。
そうしたテック産業を中心に、これから大きな成長期待が見込める銘柄を集めたのが、グロース株ETFです。
グロース株のETFには何がある?
グロース株ETFには非常に多くの種類があります。
代表的なところでは、
- VUG(バンガード Growth ETF)
- IWF(iシェアーズ Russell 1000 Growth ETF)
- VBK(バンガード Small-Cap Growth ETF)
- SPYG(SPDR®ポートフォリオS&P500®グロース株式ETF)
- IUSG(iシェアーズ Core S&P U.S. Growth)
- IWP(iシェアーズ ラッセル Mid-Cap Growth ETF)
などがあります。
それぞれのベンチマークは
- VUG= CRSP US Large Cap Growth Index
- IWF= Russell 1000 Growth Index
- VBK= CRSP US Small Cap Growth Index
- SPYG= S&P 500 Growth Index
- IUSG= S&P 900 Growth Index
- IWP= Russell MidCap Growth Index
となっています。
アップル、MS、アマゾンが上位に入る代表的4銘柄
順位 | VUG | IWF | SPYG | IUSG |
1 | アップル | アップル | アップル | アップル |
2 | マイクロソフト | マイクロソフト | マイクロソフト | マイクロソフト |
3 | アマゾン | アマゾン | アマゾン | アマゾン |
4 | アルファベット | フェイスブック | フェイスブックA | フェイスブックA |
5 | フェイスブック | テスラ | フェイスブックB | アルファベットA |
6 | テスラ | アルファベットA | アルファベットC | アルファベットC |
7 | ビザ | アルファベットB | テスラ | テスラ |
8 | ホームデポ | ビザ | エヌビディア | エヌビディア |
9 | マスターカード | エヌビディア | ペイパル | ペイパル |
10 | エヌビディア | マスターカード | アドビ | アドビ |
構成銘柄等を見ると分かるとおり、VUG、IWF、SPYG、IUSGの4つは非常に似通っています。銘柄構成比上位3社はいずれもアップル、マイクロソフト、アマゾンの3社で、4位以下のメンツもフェイスブック、アルファベット、テスラ、エヌビディアの4社が合致。違うのは、VUGだけに入っているホームデポ、VUGとIWFに入っているビザとマスターカード、SPYGとIUSGに入っているペイパルとアドビでしょうか。
クレジットカードの国際ブランドであるビザとマスターカードがグロース銘柄というのはなかなか意外な感じがしますが、株価成長率が高い2社となっています。
また、ホームデポは日本ではあまり知られていませんが、ホームインプルーブメントストア(日本のホームセンター)の圧倒的世界ナンバーワン企業。近年はデジタルを活用したオムニチャネル戦略により利益成長の著しい企業です。
上位3セクター | VUG | IWF | SPYG | IUSG |
テクノロジー | 46.10% | 44.89% | 41.71% | 40.40% |
一般消費財 | 23.50% | 16.52% | 17.06% | 16.96% |
資本財 | 13.30% | - | - | - |
ヘルスケア | - | 13.22% | - | - |
通信 | - | - | 14.81% | 14.08% |
VUG、IWF、SPYG、IUSGの4社はいずれもテクノロジー企業の比率が40%を超え、ついで一般消費財が高い点で共通しています。構成比3番目は資本財かヘルスケア、通信のいずれかです。
時価総額中、小規模のETFは独自性がある
これら4つのETFと大きく異なるのが、時価総額中規模(ミッドキャップ)をターゲットとするIWPと、時価総額小規模(スモールキャップ)をターゲットとするVBKです。
上位10銘柄の全体構成ひもそれぞれ12.3%、6.3%と低く、上位銘柄の影響度は割合低いです。
VBK | IWP | |
1 | テレダイン・テクノロジーズ | KLA |
2 | インテグリス | アライン・テクノロジー |
3 | バイオテクネ | トゥイリオ(クラスA) |
4 | PTC | モデルナ |
5 | チャールズ・リバー | アイデックス |
6 | アバンター | チポーレ・メキシカングリル |
7 | ガーダントヘルス | ROKU(クラスA) |
8 | フェアアイザック | ドキュサイン |
9 | プール | ケイデンス・デザイン |
10 | クリー | スポティファイ |
また、その上位10名柄を見てみると、IWPでは、ヘルスケアのモデルナや電子署名テクノロジーのドキュサイン、音楽ストリーミングサービスのスポティファイ、日本人も大好きなファストフードのチポーレ、メディアストリーミングのROKUなど、日本でも知られている、一点突破型のビジネスで急成長している企業が並びます。
VBKの場合、はさらに企業規模が小さく、電子部品メーカーのクリー、BtoBサービスを展開するフェア・アイザックなどからなります。
セクター別構成比を見ても、テクノロジーが高いのは共通していますが、その比率は突出して高くはなく、一般消費財、資本財、ヘルスケアで分け合っている形です。
気になるリターンは
VUG、IWF、SPYG、IUSGの4銘柄のリターンは非常に似通っています。しかしIWFだけが経費率が高いので、リターンが同程度と考えるとここで脱落します。リターンを見るとVUGが最も高く、総資産高も高いので、基本的にはVUGを選ぶのがよいのではと思います。あえてもっと分散されている銘柄を選ぶとなると、銘柄数ではIUSGなどが良いかもしれませんが、上位10銘柄の構成比はむしろ46.8%とVUGよりも高いのであまり意味はないかもしれません。また、SPYGは約60ドル、IUSGも100ドルを切っているので買いやすいと思います。お小遣いで毎月少しずつ買いたい場合はおすすめです。
ティッカー | VUG | IWF | SPYG | IUSG |
銘柄数 | 276 | 461 | 236 | 462 |
ファンド総資産 | $147.3 | $67.6 | $10.5 | $11.2 |
上位10銘柄構成比 | 45.70% | 45.0% | 49.62% | 46.8% |
外国株比率 | 0% | 0% | 0% | 0% |
経費率 | 0.04% | 0.19% | 0.04% | 0.04% |
市場価格 | $276.41 | $261.47 | $60.62 | $97.42 |
直近配当利回り(税込) | 0.65% | 0.64% | 0.79% | 82.00% |
直近配当額(03/25/2021) | $0.3800 | $0.3500 | $0.1100 | $0.1600 |
年間平均リターン(1年) | 65.06% | 62.44% | 59.30% | 60.34% |
年間平均リターン(3年) | 23.11% | 22.56% | 20.51% | 20.08% |
年間平均リターン(5年) | 20.62% | 20.82% | 19.23% | 19.10% |
年間平均リターン(10年) | 16.28% | 16.41% | 15.98% | 15.41% |
では、どこに投資すべきか
次に、時価総額の大・中・小、つまりVUG、IWP、VBKで比べてみると、やはりラージキャップのVUGの安定感が目立ちます。また、スモールキャップVBKのここ1年のリターンの大きさが目立ちます。ミッドキャップのIWPはその中間という感じですが、この3年のリターンはとてもいいです。そう考えると、ミッドキャップのIWPはそれなりに大きな銘柄を抱えていて、今後大化けするところもあるかもしれないので投資するには面白いかもしれません。
ティッカー | VBK | IWP |
銘柄数 | 639 | 359 |
ファンド総資産 | $35.9 | $15.4 |
上位10銘柄構成比 | 6.3% | 12.3% |
外国株比率 | 0% | 0% |
経費率 | 0.07% | 0.24% |
市場価格 | $285.28 | $108.75 |
直近配当利回り(税込) | 0.39% | 82.00% |
直近配当額(03/25/2021) | $0.1900 | $0.1600 |
年間平均リターン(1年) | 83.49% | 62.54% |
年間平均リターン(3年) | 19.41% | 30.85% |
年間平均リターン(5年) | 19.08% | 19.38% |
年間平均リターン(10年) | 13.17% | 14.52% |
最後に、VUGとIWP、さらに有力ETFのVTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)の3銘柄で、リターンを比べてみます。いつも通り、2015年4月から毎月3000ドルずつ投資して配当金を再投資に回した場合のシミュレーションです。
その結果、最終的なリターンはVUG、IWP、VTIの順になりました。VUGが$438,054、VTIが$384,197ですから大きくアウトパフォームしています(もちろんこれが今後のパフォーマンスを保証することは一切ありません)。意外だったのは、VUGは、2021年をのぞいて、15年〜20年までいずれの年もVTIをアウトパフォームし続けたということです(年間利回りがマイナスの時も含めて)。
結論を書くと、グロース株ETFを買うなら基本はVUG、そして買いやすさでIUSGかSPYGじゃないでしょうか。ミッドキャップを買うのは面白いと思いますが、資本力を背景に研究開発費とM&Aを積極的に行えるラージキャップのテックカンパニーの寡占化が進むことを考えると、いまからあえてミッドキャップを買う必要があるのか、とは思います。