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大きなお世話!パナソニック社員、割増退職金でFIREできるか、徹底試算してみた!

2021年5月19日

こんにちは。パナソニックが50代を中心に大規模なリストラを企画していることがダイヤモンド・オンラインのスクープでわかりました。50歳幹部で最大だと実に4000万円の割増です。当事者の方々は「寝耳に水」の突然の報道に戸惑っているかもしれません。大きなお世話ながら、この希望退職募集に応募した場合、金輪際働かずに生活できるのかどうか、割増退職金のさまざまなケースを想定し、税金含め徹底試算しました。

パナソニックの概況とリストラ策

ダイヤモンドオンラインは5月17日に「パナソニック「割増退職金4000万円」の壮絶リストラ、年齢別加算金リスト判明【スクープ完全版】」を掲載しました。こちら、完全版は有料読者限定です(かぶうさは有料読者です)。

割増退職金は最大でプラス50ヶ月

有料記事ですので詳細は明らかにはしませんが、無料で公開されている範囲で記事をまとめると、持ち株会社制に移行するパナソニックがその新体制スタート前に、バブル期に入社した50〜55歳前後の高齢社員を標的にしたなりふり構わないリストラを行おうというものです。

記事によると、割増退職金の支給上限額は4000万円で、支給月数ベースで50ヶ月。これが支給額のピークである50歳にあたります。51歳の場合は49ヶ月、逆に49歳だと42ヶ月になっており、50歳〜の社員を明らかにターゲットとしています。それ以外の支給月数についてもバッチリ出ているのであとは有料記事をお読みください。

パナソニックの業績推移とリストラの背景

さて、パナソニックですが、近年業績は芳しくありません。

2011年は8.7兆円もの売上高がありましたが、漸減傾向にあり、直近の20年度は6.7兆円まで下がっています。この10年で売上が2兆円も溶け出したわけです。

20年度の親会社所有者に帰属する当期純利益は1650億円で対前期比26.9%減で、当期純利益率は2.5%となっています。利益率は、12年3月期から2期連続で7000億円を超える巨額の当期純損失を出していたのと比べれば、非常に改善されていますが、はっきりいってグローバルレベルでは極めて低いといえるでしょう。

同業のソニーと比べると、その差は歴然です。

21年3月期 パナソニック 対前期比 ソニー 対前期比
売上高 66987 -10.6% 89993 9.0%
当期純利益 1650 -26.9% 11717 101.3%
当期純利益率 2.5% - 13.0% -
連結従業員数 259385 - 111700 -
一人あたり当期純利益 63万円 - 1005万円 -
パナソニックとソニー、直近決算の概況 当期純利益=親会社帰属の当期純利益

ソニーは売上高約9兆円に対して、親会社帰属の当期純利益は1兆1170億円もあり、当期純利益率は実に13%を確保しています。

大きな違いは連結従業員数にも現れています。ソニーはパナソニックの半分の従業員すうでパナソニックの1.3倍以上の売上を上げ、7倍以上の利益を上げているわけです。

従業員一人当たり当期純利益を計算すると、ソニー1005万円に対し、パナソニックはわずか63万円。

ここからも、パナソニックという会社が経済合理性という点でいかに非効率な組織運営がなされていて、多くの余剰人員を抱えるかが想像できます。

パナソニックでは人員整理という名のリストラにはこれまでずっと否定的でしたが、そんなことは言っていられないレベルにまで追い込まれたと考えるのが自然です。

早期退職を求められる50歳社員はこんな人たち

そう考えると、今回のリストラ、パナソニックはかなりの覚悟を持って、本腰で遂行するであろうことは想像に難くありません。

では、ターゲットとなる社員はどんな人たちでしょうか。

早期退職の標的になる社員の年収目安

上限支給される人の場合50ヶ月支給で4000万円ですので、対象社員は、最大で月額80万円をもらっていることになります。これに賞与が加わりますので、年間5ヶ月支給だとすると、年収は1360万円となります。素晴らしい勝ち組ですね。この給与水準は、管理職で役員一歩手前クラスの人たちということになります。

50歳の非管理職(組合員)の方もいますので、その場合は賞与込年収予想900万円弱+月々の残業代という感じかと思われます(月額約50万円)。

例えば50ヶ月支給で月額50万円の50歳の非管理職の場合、退職金は2500 万円になります。

その間として、50歳の課長職、月額報酬63万円の場合の退職金は3200万円となります。いずれも大卒で勤続28年とします。

退職金は確定拠出型年金に移行済み その試算は

さて割増年金以外に通常の退職金も支給されます。ただし、パナソニックの場合は2014年から確定拠出型年金に制度が変更されています。

退職時に月額報酬に勤続年数をベースに一定定数をかけた金額がもらえる通常の退職金と違い、会社と個人が共同で外部に積み立てて運用したお金を原則60歳以降から支給できるのが確定拠出型年金です。

退職金は、勤続年数に応じて控除額が変わる、退職所得控除が適用されますが、確定拠出型年金は年金ですので全額控除対象。ただし、離職後6ヶ月以内に個人型確定拠出年金に移換しなければなりません。

制度が途中から変更しており、詳細が分からないので、

1 制度変更前の積み上がった退職金は一括で前払い支給された(43歳時点)。この場合給与所得となるのでその年の年収(700万円)と退職金(1300万円)を合わせた金額は2000万円だったと仮定。手残り1500万円となり、500万円を給与として使い、1000万円を退職金としてプールした

2その後、毎月満額の5万5000円を会社が7年間支給し、社員個人が確定拠出型年金として年間0%の利回りで運用してきた(=会社支給総額は462万円)

と仮定します。これは50歳時点の役職・年齢にかかわらず同額とします。

また、50歳時点での金融資産は平均1200万円・中央値600万円ですが、前述の1を合わせて2200万円と仮定。また、住宅ローン残債と売却価値を同額として、住宅ローン完済と引き換えに住宅を手放すものとします(これは今後一切働かずに生活できるかを試算する上で、月々のローン支払額が多いと成立しにくいためです。親から相続した土地に建てたから上物だけの負担で、ローン残債は少ない、あるいは繰上げ返済で完済済みという人もいるでしょうが、ここではその仮定の元進めます)。

退職者が得られるキャッシュインフローは3つ

結果、退職者が得られるキャッシュインフローは

  1. 割増退職金
  2. 65歳〜確定拠出型年金
  3. 65歳〜年金

したがって65歳までは割増退職金と手持ちの金融資産を運用しながら使っていくことになります。

金額に応じた3パターンの早期退職割増金の手残り

  部長職 課長職 組合員
退職金 ¥39,990,000 ¥32,000,000 ¥25,000,000
退職控除 13600000 13600000 13600000
課税退職額 13195000 9200000 5700000
所得税率 33% 33% 33%
控除 1536000 1536000 636000
退職所得税 ¥2,877,535  ¥1,531,500  ¥1,271,145 
住民税率 10% 10% 10%
住民税率 ¥1,319,500  ¥920,000  ¥570,000 
手残り退職金 ¥35,792,965  ¥29,548,500  ¥23,158,855 
純税率 10.50% 7.66% 7.36%
※4000万円以上の所得税率は45%となるため3999.9万円とした

表は税払い後のそれぞれの税払い後退職金(=手残り退職金)を示したものです。

流石に約4000万円ともなると相当税金に持っていかれますね。

年金の試算

次に年金についてざっくり前提条件を決めます。

厚生年金支払い年数:28年
平均年間所得:700万円
学生時代の国民年金加入期間:4年
配偶者は7年間働きその後主婦

として、65歳から年間210万円が得られるとします(税引き後手取りは2050000、月額17万円)。

FIRE後の資金状況を試算

割増退職金を含めた金融資産をすべて投資に回すとして今後の金融資産の推移を確認していきます。

割増退職金4000万円のAさんの場合

まず、4000万円の割増退職金をもらうAさん。

5779万円の金融資産をすべて投資に回し、5%で運用します。その間、年金給付の65歳までは毎年税払い前400万円を取り崩して生活費に当て、65歳以降は200万円を毎年切り崩すシミュレーションとします。
初期金融資産:57,792,965、初年度切り崩し金額:4,000,000、年間リターン5% 投資額マイナスは引き出しを意味する

age year 投資額 期初累計額 運用益 年末金融資産合計
51 1 53,792,965 53,792,965 2,689,648 56,482,613
52 2 -4,000,000 52,482,613 2,624,131 55,106,744
53 3 -4,000,000 51,106,744 2,555,337 53,662,081
      中略    
64 14 -4,000,000 30,582,727 1,529,136 32,111,863
65 15 -2,000,000 30,111,863 1,505,593 31,617,456
66 16 -2,000,000 29,617,456 1,480,873 31,098,329
65歳から年金が210万円支給のため毎年の切り崩し額が200万円に減少

その結果、確定拠出型年金(年2%の運用)を使うことなくして、93歳まで資金が枯渇しないという結果になりました。

運用が3%だとするとだいぶ景色が変わってきます。

74歳で資金が枯渇してしまうからです。そこで65歳以降は、確定拠出型年金を年100万円使うことにします。すると65〜75歳までの金融資産取り崩しは年間100万円で済むので、80歳まで枯渇しないという結果になりました。

割増退職金3200万円のBさんの場合

次に3200万円の割増退職金をもらうBさん。

5155万円の金融資産を同じくすべて投資に回し、5%で運用します。

すると、確定拠出型年金を65歳から年100万円ずつ受け取ったとしても73歳で枯渇します。

次にもう少し生活水準を落として、税別350万円で暮らすとなるとどうなるでしょうか。確定拠出が年金の枯渇も82歳まで伸び、全体金融資産の枯渇は84歳となりました。

「5%運用だからできるのでは?」と思うかもしれないので、これを3%に引き下げても同様、84歳での枯渇ということになりました。

割増退職金2500万円のCさんの場合

最後に2500万円の割増退職金をもらうCさん。

4516万円の金融資産を同じくすべて投資に回し、5%で運用します。

その際、年間の資産取り崩し額を350万円にしたとしても、75歳で枯渇します。

そこで月10万円だけ60歳までアルバイトすることにします。

すると、年収(金融資産取り崩し+アルバイト代)が350万円の場合、いつまでも枯渇することはなく、400万円の場合でも85歳まで枯渇することはありませんでした。

3人とも退職後、年収(金融資産取り崩し)を350万円〜400万円まで落とした上での数字です。その場合の手取り収入は、配偶者控除ありなので、400万円の場合で約325万円、月額27万円です。350万円の場合で約285万円、月額24万円弱です。

この水準で生活できるのであれば、AさんとBさんは働かずとも生きていくことができ、Cさんは月10万円を稼ぐかたちで、あまりお金に縛られずにFIREすることができます。

まとめ 働かずに生活していくための心構え

今回は、「金輪際働かずに生活していけるか」をベースにシミュレーションを組みましたが、緩く月10〜20万円を稼ぐことを念頭におくと、Aさん、Bさん、Cさんいずれのケースでも一定の生活水準に抑えれば可能です。

ただし、今回は計算を簡易にするため、持ち家を手放し、住居費の安いエリアに引っ越すことなどがその条件となっています。住宅ローンの月月返済額や持ち家の状況次第では、持ち家を難なく維持することもできるでしょう。

いずれにせよ、FIREをめざす場合、適宜収入を得る手段を持つこともそうですが、生活コストを一定水準まで落とすことが重要になってきます。

その意味で、50歳で1度にこれだけの資金を手にしたときに、余計なことにお金を使わずに、計画的に運用できるかどうか、お金との向き合い方が問われてくると思います。何より、配偶者をはじめとする家族の理解が最も大事です。

あえて、50歳でリタイヤ、セミリタイヤすることを前提にシミュレーションを組んでみました。もちろん、再就職してガッチリ稼ぐ場合は、相当の消費生活ができます。目指さずしてFIREが実現できる立場なのですから相当恵まれていることは事実です。もちろん、実際に彼らがめざすかどうかは別問題ですが、選択肢が多いのは素晴らしいことだと思います。

※今回、投資資金に回すお金は、計算を簡易にするため、元本部分にもすべて20%の税金をかけています(本来は投資によって増えた分のみにかかる)したがって、実際のキャッシュフローをもっとゆとりのあるものになっています。

これを執筆するのはなかなか疲れましたが、他人のライフ&マネープランを勝手に診断するのは面白いこともまた事実です。

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