経済・マーケット分析

景気後退来る!米国で起こっている異変と訪れる絶好の買い場とは

米国の景気悪化懸念が高まっています。さまざまな指標をもとにその異変をまとめるとともに、今後起こりうることについて解説します。最後に、いつ絶好の買い場が訪れるのかについても言及します。

経済を犠牲にしてもインフレを押さえ込む

アメリカの消費者物価指数は4月+8.3%となり、+8.5%となった3月よりその伸び率が鈍化しました。

ウクライナ危機に伴うエネルギー価格の高騰が4月に入り落ち着きを見せた格好ですが、中国のゼロコロナ政策の副作用であるサプライチェーンの分断の影響も大きいうえ、ロシアとウクライナの戦争は長期化の様相を呈しており、この異常な物価高はしばらく続きそうです。

そうしたこともあり、連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長はタカ派寄りに転じ、インフレを押さえ込むために積極的な利上げを行い、そのために多少経済を犠牲にすることも厭わない姿勢を見せています。

5月のFOMC0で.5%ptの利上げを実施後、0.5%の利上げをあともう2回、その後は0.25%の利上げを繰り返し、年末の政策金利は2.5%~3%程度になるものと予想されます。FED WATCHでは22年12月について、政策金利2.5~2.75%の確率を36.5%、2.75%~3%の確率を50%としています。

米国、リセッションへの懸念が高まる

一方で、原価高、物価上昇、人件費高騰、そして金利上昇により、米国の経済は確実に異変を見せています。ISM製造業景気指数は4月が55.4と前月の57.1から下落、これは20年7月以来の低水準で、エコノミスト予想も下回っています。消費者物価指数が高止まりしていることから分かる通り、米国では製造業の値上げ分を価格に転化することができています(BtoBの場合も)。

では賃金アップを得ている消費者側はどうかというと、22年5月のミシガン大学消費者信頼感指数は59.1となり、前月の65.2から大きく低下、予想の64も下回る結果となりました。内訳ではいまの消費を取り巻く状況を示す現況指数が「09年3月以来の低水準」(ロイター)となる63.6、期待指数も前月の62.5から56.3へと大きく低下しました。

このように、消費者は物価高の影響を受けるとともに、今後についての見通しも暗くなっていることがわかります。

小売業績悪化が示す、リセッション入りの始まり

実際の消費者の消費者動向を見てみると、22年4月の小売売上高は対前月比0.9%増で4ヶ月連続の増加。消費動向は悪くはないように見えます。ただしこれは値上がりが激しいのが食品などの生活必需品でありこれを一切買わないことは難しい。消費者の中には、より低価格の商品にシフトする動きが出ていたり、低価格スーパーでも利用が広がっていたネットスーパーをやめ、自分の足で買い物をする行動が増えるなど、節約傾向が強まってきています。

したがって、モノの価格が上がっているなかで、消費者は値上げを受け入れつつも、自分のできる範囲で家計を防衛しようとしているというわけです。だから、米大手小売業の決算をみても、売上高は好調なのです。米大手小売のターゲット、ウォルマートともに、売上高と既存店売上高は予想を上回っています。

でも、この小売大手の業績が全米に「リセッション入りの始まり」を印象付ける結果となりました。なぜなら、商品原価と販売管理費の高騰により、利益を大きく圧迫したからです。

ターゲットの22年2-4月期決算は、営業利益が予想19.7億ドルに対し結果は13.5億ドルとなり、通期のアナリスト利益予想も大きく低下、1日で25%安という株価大暴落に見舞われました。

住宅市場の異変と影響を受けるカテゴリー

金利上昇と需給バランスが崩れたことにより、市況がいち早く暗転したのが住宅産業です。コロナ禍で在庫を絞ったことにより新規住宅件数が少ないまま好景気に突入、その後はサプライチェーンの分断が続いたため、常時新築住宅の在庫が少ない状況が続きました。米国の住宅市場は「住み替え」によってマーケットが作られているので、新築住宅が少ないと中古住宅の玉も当然少なくなります。すると、需要が供給を上回っているため、木材価格や工賃の高騰もあって住宅価格は高止まりするわけです。

ここに、金利上昇が追い討ちをかけました。住宅ローン金利が11年ぶりの高水準である5%へと上昇したことに伴い、消費者の間で一時的に家を買うのを控える動きが顕著になったのです。こ

れにより住宅ローンの申請件数は対前年比で約40%も減少しました。直近4月の住宅着工件数も予想178万件に対して結果172.4万件と悪化しています。

ちなみに、住宅市場が弱含むとホームデポやロウズなどのホームインプルーブメント企業、インテリア関連の企業、リフォーム機材、部材などを販売する企業の業績が落ち込みます。

大手ハイテク企業のリストラが意味すること

さらに、労働集約型産業は人手不足が続いて人件費はまだ上がっている一方で、一部のハイテク企業では、人員削減の動きが見え始めています。今後業績にブレーキがかかる局面でできるだけコストを抑えておきたいというわけです。

例えばTwitter社は5月12日、採用を一時凍結したことが明らかになったほか、Netflixも人員削減を発表。3月末に長短金利差が一時逆転し、これから1〜2年後にリセッションが確実に来ると言われてきましたが、その想定よりも早めに景気減速が訪れる可能性が高くなったと言えるでしょう。

景気減速すれば利上げは終わる

一方で景気減速によって起こる良いことと言えば、インフレがナチュラルに解消されること。FRBは年末までは利上げを行いつつ、この後は金利維持あるいは利下げという選択肢もあり得ると思います。実際、タカ派で知られるセントルイス連銀のブラード総裁は、利上げが前倒しで行われるなら23年には利下げも可能になると発言しています。とは言え、この前提は年末までに3.5%に金利を引き上げることなので、いまのパウエル議長のスタンスからするとちょっと起こらなそうな水準でしょう。

いずれにせよ、経済が減速すれば、必然的にインフレは落ち着き、人件費も高額なテック人材のレイオフや賃金抑制だけでなく、労働集約型の小売や外食、製造業などの賃金上昇も止まります。

最大の懸念とスタグフレーションリスク、そして絶好の買い場到来へ

ただし懸念は、相変わらずロシア・ウクライナ情勢とコロナ、正確にはゼロコロナ政策です。この2つによる小麦や電力、モノの供給不安に伴う原価、コスト増はアメリカがインフレであろうとなかろうとヒートアップする可能性があるからです。

その意味では、最悪のシナリオとして、スタグフレーション入りする可能性もあると思います。この場合企業業績はボロボロになるので、将来得られるキャッシュフローを現在価値に割り引いたものの総額である株価は急下落する可能性があります。

ただ、そこでFRBは経済を救うために金利を大きく引き下げることになります。そこで株式のバリュエーションが見直され、また住宅産業を中心に消費が活発化することになるので、これから起こりうるリセッションは絶好の買い場になると言えるわけです。

そんなわけでしばらくは我慢が続くわけですが、長期投資をするならいまから少しずつ買っていくのが良いと思います(しばらくはマイナスが続きますが)。

ただ、仮に金利が大きく下がった場合何が起こるかというと、円高に大きく触れる可能性が高いことを意味します。為替次第で5%株価が上がっても10%為替差損が出るような局面だと思うので、買い時には注意が必要でしょう。それでも長期で投資をする人にとってはあまり考えなくても良いと思います。

 

 

 

 

 

 

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