税制

悲報 武市早苗”新総裁”でなくとも金融所得増税は既定路線と考えられる2つの理由

自民党総裁候補に出馬する意向を示している武市早苗が重点政策の1つとしてあげた「50万円を超える金融所得に関する税率を20%から30%への引き上げる」という発言が大問題となっています。しかし、残念ながら金融所得増税の流れは既定路線だと考えて良いと思います。各総裁候補の考えを合わせ、増税が既定路線である理由と増税の狙いをまとめました。

武市早苗氏の発言とは

武市早苗氏は自民党総裁に出馬するにあたり、以下のような発言をしています。

「金融所得50万円以上の税率を現状の20%から30%に引き上げる。これにより約3000億円の税収増を見込む」

有力候補、河野太郎氏と岸田文雄氏の考えは?

ただ、増税を検討しているのは武市氏だけではありません。

次期総裁有力候補の1人、河野太郎氏も自著のなかで「金融所得税の増税」に触れているとされています。

一方、もう1人の有力候補・岸田文雄氏は昨年9月、ガースーこと菅義偉と内閣総理大臣の座を争った際、格差是正について語り、アベノミクスで得た成長の果実を中間層や中小企業まで行き渡らせるために、「所得の中間層に対しては、金融所得税制について考える」(産経新聞。20年9月)と発言しています。

額面通り受け取れば、「老後資金2000万円不足問題の解決のために自分で投資しましょう、そのためにNISAを活用しましょう」と政府が投資を奨励してきたなかで、中間層の不満のガス抜きのために、ある一定以下の所得の人に関しては金融所得税を引き下げたり、一定金額までの控除をするなどの政策を検討していることが予想できます。

ただ、日本における中間層とは年収500〜600万円程度なので、それよりも所得が多い層はやはり狙い撃ちされると覚悟した方が良いかもしれません。

金融所得税とは

金融所得税とは、株の売買や配当に対してかかる税金で、2003年に20%となりました。ただ、当初から10%の軽減税率が期限付で導入され、複数回の期限延長を経て2014年から現行の20%となりました。ただ、この20%を決めたのは2010年の民主党政権時のこと。したがってその残党とも言える立憲民主党も金融所得税の増税を政策としています。

金融所得税を増税したい理由は税収確保ともう1つ

金融所得税を増税したい理由は2つ。1つは武市氏が狙う通り「税収の確保」、もう1つは「所得格差の是正」を(アピール)するためです。

所得が増えるほど税率が下がる理由は?

所得税は累進課税制度なので、所得が上がるにつれて、税率は上がります。

ただし、世の高所得者の収入は、何も給与所得だけでもらっているわけではありません。それこそストックオプションを含めた金融所得の割合が、年収が上がるほど多くなります。この金融所得は、現行では一律20%ですから、結果的に金融所得の割合が増えるほど減税になるわけです。

上場企業でもオーナー社長などで報酬が異常に安い会社がありますが、それを額面通りに受け取ることはできません。要は多額の株式配当を得ているからです。

所得税は4000万円超の部分について45%の税率となっていますが、金融所得なら何億円もらっても20%。金融所得比率が高まるほど、実態の税率は下がる仕組みです。だから、極端な例を言うと、年収900万円(うち給与所得900万円)の人の税率は33%ですが、年収4000万円(うち給与所得2000万円、配当所得2000万円)の人の税率は30%(所得税=40%)となり、逆転現象が起こるわけです。

金融所得増税は富裕層ではなく、中間層の狙い打ち

格差是正を錦の御旗に、金融所得増税を掲げる政治家たちですが、実態を調べれば、「富裕層課税強化に見せかけた大衆増税」だと大和総研は喝破しています。

その論旨を引用させていただくと、以下のようになります。

年間所得1億円の所得層において平均税率が低下していく実態を是正するために金融所得税率をしたとしても、納税者に占める比率は0.04%に過ぎない。

20%から25%に引き上げた場合、富裕層よりも中堅層以下の層の増税効果の方がはるかに大きい、つまり大衆増税である。

政治家が税収を上げるための基本は、「取りやすいところから取る。手っ取り早いところから取る」という大原則も含めて考えると、仮に武市早苗が負けて今回の増税が流れたとしても、将来的な金融所得増税は避けられないような気がします。

つまり、金融所得税は上がるもの、として認識しておくことが大事です。

われわれの対策としてできることは、FIRE計画の大幅な見直しと将来的な海外移住の検討、ではないでしょうか。

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