今回は、日本の世帯収入の平均よりもやや低い年収500万円で資産1億円を達成するにはどうすればいいかを考えました。
日本の世帯平均年収は552.3万円
まず、日本の世帯平均年収は、「2019 年 国民生活基礎調査の概況」(厚労省)によれば、高齢者世帯を含む全世帯で552.3万円(2018年)となっています。
高齢者世帯のみだと312.6万円、高齢者世帯を除くと659.3万円、児童がいる世帯は745.9万円です。なお、2020年はコロナウイルスの流行により中止となっており、2019年版が最新版となっています。
面白いのは、全世帯平均だと2010年が538万円なので、この間2.7%しか増えていないにも関わらず、高齢者以外の世帯、いわゆる勤労世帯は2010年の607.3万円から8.6%の増加、さらに児童がいる世帯の場合は2010年の658.1万円から13.3%も増えているのです。もちろんインフレがほぼ起こっていないため、高齢者世帯の年間所得は、2010年の307.2万円から1.8%しか増えていません(年金は物価スライド式のため)。注:2010年の数値は、東日本大震災の影響から、福島・宮城・岩手県を除いてあります。
この傾向が何を意味するかといえば、共働き率がどんどん高まっているということです。特に児童がいる世帯においての所得の伸び率が高いのはそうした理由がありそうです。
高齢者以外の世帯の年収伸び率がさほど高くないのは、所得の高い中年の小なしパワーカップルだけでなく、若年層の1人世帯も含まれる上、晩婚化、独身化の高まりで単身世帯が増えていることが挙げられます。日本では給与所得はほとんど上がっていないからです。
さて、本稿では全世帯の平均年間所得552.3万円より少ない、年収500万円世帯が資産1億円を達成することができるのか、またそのためにはどうすればいいのかをシミュレーションしたいと思います。
額面年収500万円はいくら投資に回せるのか?
年収500万円世帯の場合、単身者と既婚者に分かれますので、本稿でもこの2パターンでシミュレーションを行います。
単身世帯の場合
まずは単身者の場合、手取り収入は390万円となり、月額にならすと32.5万円となります。意外に多く感じますね。
都内在住だとして、1ヶ月の生活費は
年収500万円の単身者の生活費(1ヶ月)
家賃 7万円
水道光熱費 2万円
食費 4万円
遊興費 4万円
通信費 1万円
雑費 2万円
とすると、20万円かかることになります。急な出費に備える予備として2万5000円を現金で積み立てておくとして、月10万円を投資に回すことができます。つまり、年間120万円を投資に回せることになります。
これで26歳から投資をスタートするとしてシミュレーションします。
まず年平均3%のリターンが得られるとき、
定年までの60歳までに4200万円を総投資して、60歳時点で7473万円となります。もしこの時点で2527万円以上の退職金が得られれば、その時点で見事1億円達成です。
現実的な線として退職金が1800万円だとすると、その全額をその年投資に打ち込み、61歳以降は再雇用され一切投資余力がなくなるとしても、63歳時点で1億円を達成することができます。
かなり安全マージンの大きい3%でも達成できるのですから、4%だと退職金1800万円が入った時点で1億円を突破、5%だと退職金など関係なく、58歳時点で大台に乗ります。ちなみに同様に退職金1800万円を打ち込むと、5%で運用し続けられれば69歳時点で2億円に到達します。これは夢がありますね。
このように、単身者であれば、年収500万円でも規律のある暮らしをしていれば、1億円達成は余裕です。都内で車を持つとなるとかなり郊外の方(埼玉県含む)に引っ越さないと少し難しいかもしれませんが、地方であればその分家賃が安いので問題ないでしょう。
既婚者の場合
次に既婚者の場合、手取り収入は400万円となり、月額にならすと33.3万円となります(配偶者は働かず、家事、倹約に勤しんでいただくとします)。
都内在住(少し郊外に引っ越す)だとして、1ヶ月の生活費は
ポイント
家賃 9万円
水道光熱費 2.5万円
食費 6万円
遊興費 2万円
通信費 1万円
雑費 2万円
とすると、23万円かかることになります。急な出費に備える予備として1万3000円を現金で積み立てておくとして、月9万円を投資に回すことができます。
つまり、年間108万円を投資に回せることになります。予備費を積み立てれば定期的に旅行なども可能です。
これで26歳から投資をスタートするとしてシミュレーションします。
まず同様に、年平均3%のリターンが得られるとき、
60歳時点で総投資額3780万円に対して、資産は6725万円。1800万円の年金を全額ぶち込めばこちらは年金生活の始まった66歳で1億円達成です。
ここまで来れば毎年290万円ずつ取り崩しても資産が減っていくことはありません。が、さすがにちょっとお金を使えるのが遅すぎる気がしますね。
次に4%で運用する場合は、こちらも単身者の場合と同様、1800万円の退職金をぶち込んだ時点で1億円達成です。
1億円達成のために大事なことは
年平均リターン4%というのはかなり確度の高い投資ですから、実現可能性はかなり高いと言えるでしょう。
達成のためにもっとも大事なことは、「時間」と「入金力」です。
26歳からスタートのシミュレーションなので、いずれの条件でも1億円をクリアすることができましたが、仮に35歳からのスタートの場合だと、既婚・月9万円の入金だと60歳定年時の金融資産額は年平均4%だと4977万円。その後1800万円の退職金をぶち込んでも、1億円達成は70歳になります。これでは、老後資金としては十分でも、何のためにお金を貯めたかわからなくなります。
もう少しリスクをとって利回りを上げるか、もしくは入金力を上げるか、あるいは目標を下方修正するかのいずれかの選択を迫られると思います。
次に入金力について。今回は年収は500万円のまま変わらないという条件だったので、入金力を決めるのは、規律と習慣化です。あまり厳しすぎると長続きしないので、ダイエットと同様、チートデイやチートウィークエンドをつくったり、節約を楽しめるような工夫が必要です。
また、5000円ずつ水光熱費と食費を削ることができれば、より入金力を高めることができますし、家賃についても再考の余地があります。さらにいえば、持ち家を持つことも可能ですし、低金利・高住宅ローン減税の時に買うことができていれば、より安定した入金力を維持することができます。
持ち家も本当に可能なのか?
では、都内に持ち家も本当に可能なのかを調べてみました。
既婚世帯の場合、固定資産税の支払い、15年に一度の外壁補修なども考えると、月々の支払額は8.3万円程度に抑えたいところ(足りない部分は予備費を積立ましょう)。ここにはそれぞれ70万円ずつの融資手数料と保証料費も加味してあります。
全期間固定で1.2%、35年、元利均等、ボーナス払いなしであれば2850万円までの借り入れでそれら条件をクリアできます。
購入の場合の仲介手数料は「5%+税」、これに登記費用などを考えると、購入可能な物件の上限は2690万円となります。
この金額で買える、新築戸建て物件が都内にあるかというと、、、
結構あります。
スーモの検索でのべ100件ありました。すべて東京23区外ですが、駅まで徒歩圏内の物件も散見されます。
ちなみに、マンションの場合は月々の費用に管理費が加わるのでもっと月々の支払いを下げる必要があります(修繕積立費も)。
次に埼玉県内で東京都寄りの市・区*であれば駅徒歩15分圏内で同じ条件で50件以上見つかりました。
*さいたま市、川越市、川口市、所沢市、飯能市、三郷市、新座市、ふじみ野市
なお、単身者の場合は、月6.1万円ほどの返済額に抑えて、残りを管理費、積立金に当てるとすると、仲介手数料、諸手当を考えると1900万円台までの中古マンションが現実的な選択肢になります。新築マンションだと東京、埼玉ともに2000万円以下の物件数は現在ゼロでした(新築戸建てだと埼玉県に3件ほどあり)。
まとめ 年収500万円でも1億円突破は現実的
いかがですか?
このように考えると、普段の生活に規律を持ち、時間さえかけられれば、年収500万円世帯でも金融資産1億円をつくることが可能なことがわかりました。若いうちから始めていれば、かなり実現性は高いでしょう。
年収500万円は、「高年収」「余裕がある」という意識はないでしょうから、むしろ贅沢をせず(知らず)に生活できるため、中途半端に年収が高いよりもずっとお金を貯めやすいかもしれません。
いずれにせよ、大事なのは規律と習慣化に裏打ちされた入金力と、できるだけ若い時から始める「時間の確保」です。