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好決算に沸く米国金融セクター PER割安放置で、株高の今でも買える銘柄を解説!

2021年5月3日

21年1〜3月期決算は、好決算企業が相次いでいますが、その中でもセクターとして好調と言えるのが「金融株」です。空前の株高を背景とする証券業務や、SPAC(特別買収目的会社)ブームに乗ったM&A(合併・買収)の活発化に伴う投資銀行業務が好調に推移したこと、以外にもいろいろな要因があります。今回は、金融セクターのETFについて解説していきたいと思いますここでは大手5社、バークシャー・ハサウェイ、JPモルガン、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ゴールドマンサックスの最新決算をハイライトするとともに、ETFとしてXLF、VFH、FASを解説します。

好決算にわく米金融企業 大手5社の21年1-3月期決算ハイライト

企業名 純利益 2021 純利益 2020 対前期比
バークシャー・ハサウェイ $11,711  ($49,746) -
JPモルガン・チェース $14,300  $2,865  5倍
バンク・オブ・アメリカ $8,050  $4,010  2倍
シティグループ $7,942  $2,536  3.1倍
ゴールドマンサックス $6,836  $1,213  5.6倍
単位:100万ドル 各社決算資料よりかぶうさ作成

上の図表が金融セクターを構成する主な5社の2021年1-3月期決算の数字です。どの会社も当期純利益(Net earnings/Net income attributable to**)が大幅に拡大しているのが分かります。もっとも増益率の低いバンク・オブ・アメリカでも対前年同期比2倍となっています。

前期の惨状から復活したバークシャー・ハサウェイ

投資の神様ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの前期(20年1-3月期)が悲惨なことになっているのは、新型コロナウイルス感染症拡大により株式市場が急落し、多額の評価損を計上したため。497億ドルという多額の当期純損失を計上しました。一方、21年1-3月期は57億ドルのプラスを計上しています。それ以外の数字(保険事業やエネルギー事業からの収益)は大きく変わっていませんので、概ね通常巡航に戻ったということでしょう。

JPモルガンの好調はSPACブーム牽引というより、貸し倒れ引当金の戻り益

当期純利益が5倍となったJPモルガンは、法人金融・投資銀行業務(CIB)の当期純利益が19.9億ドルから57.4億ドルに急拡大したことが大幅増益要因の1つ。SPAC上場ブームを背景としたM&A業務に加え、金融緩和を背景に機関投資家の旺盛な取引需要に伴う証券サービスの売上が大きく増えました。

ただ、もっとも影響が大きかったのは、前期に法人・個人向け銀行部門で57.7億ドルに及ぶ貸し倒れ引当金を計上しており、21年1-3月期は引当金の戻り益36億ドルを計上したことが大きいです。これだけで都合93億ドルの当期純利益押し上げ効果があります。今回の増益の大部分を占めるわけです。

この項目は一時的なものに過ぎません。したがって、長期にわたって収益拡大を意味するものではありません。その意味では、M&A業務は今後SPACの選別が行われるので不透明であることを鑑みると、実体経済の回復に伴って、企業の資金需要が拡大する、あるいは現在増加中の住宅ローンの貸し出し残高が増えること、そして株高が続くことによる証券サービス業務の収益維持・拡大があると、今後も利益面では安定的な伸びが期待できそうです。

金融セクター、底堅さ続くか

このように、各社、状況は異なりますが、20年1-3月期のコロナ危機の反動により、利益が大幅に増えているもので、株式市場がこれら好決算を目の前にしても大きく株価が上がらなかったことは理解できます。

それでも、引き続き連邦準備理事会(FRB)が金融緩和を続け、政策金利を維持する方針を明らかにしていますので、しばらく金融株は底堅く成長すると考えられます。

金融セクター有力8銘柄のPERとリターンを確認

次に、金融セクターを代表する有力8銘柄のPER(株価収益率)とリターンを確認していきます。

21年1-3月期決算を見ていった5社に加え、ウェルズ・ファーゴ、ブラックロック、アメリカン・エキスプレスの3社を新たに対象としています。

  PER 年初来リターン トータルリターン 配当利回り
バークシャー・ハサウェイ 27.83% 18.58% 50.52% -
JPモルガン・チェース 11.99% 21.04% 70.25% 2.34%
バンク・オブ・アメリカ 16.59% 33.72% 80.02% 1.78%
シティグループ 7.99% 15.54% 62.61% 2.86%
ゴールドマンサックス 7.33% 32.13% 101.04% 1.43%
ウェルズ・ファーゴ 27.13% 49.27% 68.54% 0.89%
ブラックロック 25.18% 13.55% 73.32% 2.02%
アメリカン・エキスプレス 25.18% 26.83% 76.28% 1.12%
Bloogbergよりかぶうさ作成

これを見ると、いわゆる「銀行」は、ウェルズ・ファーゴを除くと軒並みPERが割安〜比較的割安で推移していることがわかります。ウェルズファーゴは大手銀行ではありますが、他の大手が投資銀行業務を主力とする一方、ウェルズファーゴは昔ながらの商業銀行をベースとしているのが特徴です。

シティグループとゴールドマンサックスのPER7倍台というのはかなり割安と考えられますし、JPモルガン、バンク・オブ・アメリカも、割高ではない水準にあります。ちなみにS&P500種指数の予想PERはウォールストリートジャーナルによれば23.07%となっているので、銀行株はかなり割安で放置されていると言えます。一方でそれ以外の金融セクター銘柄は割高感がすでに出ている状況です。

となると今後は割高感を認識の上で買うか、割安銘柄を買うか、上昇余地のある銘柄を組み合わせたETFを買うかということになろうかと思います。

金融セクターETF3選とそれぞれの特徴

そこで、金融セクターETFをいくつかみていきます。

金融セレクト・セクター SPDR® ファンド(XLF)
バンガード・米国金融セクターETF(VHF)
ディレクションデイリー金融ブル3Xシェアーズ(FAS)

の3つを取り上げました。このうち、FASは3倍レバレッジ型ETFとなります。

  XLF VFH FAS
ファンド総資産 41.25 10.21 3.1
上位10銘柄構成比 54.29% 42.21% 16.88%
経費率 0.12% 0.10% 0.95%
直近配当利回り(税込) 1.67% 1.71% 0.48%
直近配当額(03/25/2021) $0.13  $0.38  $0.13 
3ヶ月リターン 25.81% 25.74% 90.03%
年間平均リターン(1年) 62.61% 64.83% 270.58%
年間平均リターン(3年) 12.16% 11.65% 20.56%
Bloombergよりかぶうさ作成、ファンド総資産の単位は10億ドル

XLFとVFHの特徴やリターンはほぼ同じ

上位10銘柄 XLF VFH FAS
バークシャーハサウェイ 12.92% 7.59% 2.43%
JPモルガン 11.57% 10.05% 2.19%
バンク・オブ・アメリカ 7.59% 6.53% 1.47%
ウェルズファーゴ 4.59% 3.32% 0.80%
シティグループ 3.67% 3.28% 0.70%
モルガン・スタンレー 3.05% 2.37%  
ゴールドマンサックス 2.96% 2.32% 0.54%
ブラックロック 2.87% 2.49% 0.57%
チャールズ・シュワブ 2.60% 2.16%  
アメリカンエキスプレス 2.47% 2.10%  
Dreyfus Government Cash Mana     5.02%
GS国債ファンド     2.08%

GSF・スクエアファンド
    1.08%
上位10銘柄とその構成比、GS=ゴールドマン・サックス、GSF=ゴールドマン・サックス・フィナンシャル

XLFとVFHはよく似ていて、上位10名柄がすべて一緒です。より上位10銘柄への集中度が高いのがXLFということになります。経費率もさほど変わらないですし、リターンも配当利回りもほぼ一緒です。ファンド総資産という点でXLFが圧勝しているので、XLFを選べば問題ないのではないかと思います。

問題はFASです。私も少し保有していますが、振れ幅が大きく、経費率も高いので、「この局面では一気に上がる」という確信が持てる時に購入すると良いと思います。

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この記事でも説明していますが、レバレッジ型ETFはその特性上、上げ下げを繰り返す局面では極めて非効率な売買を強制的に行っているためです。

それでも3ヶ月リターンが90.03%となるなど、他にはない魅力があると言えるでしょう。

このように考えると、金融セクターは、今後のコロナの状況にもよりますが、株高と実体経済の回復に伴って、しばらくは底堅い成長をすることが予想されます。多くの銘柄で割高感が強く出ているなかで、金融株はまだ投資妙味が残されていると考えています。

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