かぶうさです。コロナ禍の株式市場を牽引してきたグロース株。2021年に入って、一時金利上昇によって弱含んだ時期もありましたが、その調整局面もひと段落して、またグロース株にも買いが入る状況になっています。ここで、グロース株とはそもそも何か、どんな特徴があるのか、グロース株投資の妙味と注意すべき点について解説したいと思います。
グロース株とは
グロース株とはGrowth、つまり売上、利益が大きく成長している銘柄です。テック系や脱炭素系など、従来のオールドエコノミー企業のビジネスモデルを一瞬で陳腐化するような「ゲームチェンジャー」やそれが期待できる企業のことを、一般的にグロース銘柄と呼びます。
株価は、理屈上、将来にわたって稼得できるキャッシュフローを現在価値に割り引いたものの総額です。したがって、いまは最終赤字でも数年後にビジネスがスケールしていけば、大きな利益の創出と共に将来にわたっての長いマーケット支配が期待できる。そんな企業がグロース銘柄というわけです。
グロース株に投資する理由
グロース株は、配当利回りが平均よりもかなり低いです。これは、毎年ビジネスで得たキャッシュを、配当や自社株買いに回すよりも、自らの再成長に回した方がより株主が最終的に稼得できるキャッシュフローを最大化できるから、と理屈付けることができます。実際、例えばテック業界は生馬の目を抜く変化の激しい世界。そこでは経営判断のスピード、研究開発費の多寡、優れた人材の多寡が、勝ち残りの鍵を握ります。だからこそ、惜しみない投資が求められるのです。
その意味で、グロース株は「期待先行型」ということもできます。したがって、投資家の投資資金を何年で回収できるかを示す指標であるPER(株価収益率=株価÷EPS<一株当たり当期純利益>)の数字が市場平均より大きくなり、中には100倍を超えることも珍しくありません。
ちなみに、当期純利益をなぜ、投資回収の際の分母にするのかというと、当期純利益は一部は配当に回され、残りは純資産として企業に蓄えられるためです。
さて、100年も経たないと投資回収されないのになぜ投資をするのかと言えば、その株価に見合うだけ、売上・利益が加速度的に成長すると期待しているからです。グロース株は、いまではなく「未来の利益をみている」わけですね。
しかも、当初割高だと思った株価水準をあっさり抜くほどの巨大な利益を創出する銘柄に大化けする可能性もあります。その意味で大きなキャピタルゲインを狙えるのがグロース銘柄というわけです。
グロース株の弱みや注意点は
「未来の利益をみている」と書きましたが、未来に得られるキャッシュフローがいかに多くても、その株価の割高さを許容できない場合があります。ここにグロース株の弱みがあります。
例えばいま1億円出資して、10年後に2億円返ってくる場合を想定しましょう。
デフレ環境下の日本においては、「こんなにおいしい話はない」と思うでしょう。ところが、この1億円のリターンを許容できない時があるのです。
そうです、インフレが起こって、金利が高くなった場合です。
例えば市中金利が7%の時は、現在1億円のものが10年後に1.97億円となります。ですから、10年後2億円返ってくる場合は、その話に乗っても良いでしょう(信頼できる人や機関かどうかはここでは無視します)。逆に市中金利が8%の場合、将来価値は2.16億円にもなりますから、この話はむしろおいしくないわけです。これは、エクセルのFV(現在価値)関数を使えば簡単に計算することができます。
現在価値 | 利回り | 期間(年) | CF | 将来価値 |
¥-100,000,000 | 8% | 10 | 0 | ¥215,892,500 |
ちなみに年利7.2%で元本が倍になります。これは、ここ10年平均のETFのリターンをみれば、決して非現実的な数字というわけではありません(売却時にかかる税金は考慮に入れてません)。
ここまでみてきてわかる通り、グロース株の弱みは、金利の上昇にあります。将来稼得されるキャッシュフローが大きく増えることを期待して株価が上がっているのに、金利上昇によって、そのキャッシュフローの現在価値が目減りし、高いPERを許容できなくなるからです。
もう少し詳しく知りたい人は以下の記事をご覧ください。
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それ以外にもグロース株のネガティブな特性として重要なことに、その企業のビジネスモデルがうまく市場で覇権を握る保証はないということです。
アップルやアマゾンといった今の米国経済を代表する企業になれば別ですが、中小型のグロース株は、いつどんなディスラプションにさらされて、自社のビジネスモデルが陳腐化するかもわかりません。ライバルの台頭、新たな技術の誕生、法令や制度の変化、そもそも自社が描いたビジネスが「キャズムの壁」を超えなかった、あるいは参入時期が早すぎて調達資金を食いつぶした、などさまざまな不確実性にさらされています。
簡単に言えば、当たれば大きいけれども、ゴミ銘柄に成り下がる可能性も多分にあるということです。その意味で、グロース株なのか中小規模の二流株なのかははっきり見定める必要があります。
誰もが地味株だと思っていたらグロース株へ
グロース株だと思っていたら二流株だった、その反対に、地味株だと思っていたら、グロース株だった、あるいはグロース株に一気に変貌したというケースもあります(もちろん、安値で買ったタイミングで、ここまで大化けするシナリオを描いて買ったという慧眼の持ち主もいることでしょう)。
わかりやすい例として、日本企業のワークマンが挙げられます。
ワークマンは職人向けの専門店をFC展開していて、地味ながらも安定した利益を確保していて、成長性は低いけど安定性の高いいぶし銀の銘柄でした。ところがプライベートブランド(PB)の開発を強化した頃から景色が変わります。ワーク衣料で培った堅牢性に、スポーティデザインを加えたことで、アスレジャートレンドも重なり、ユニクロやg.u.(ジーユー)よりも下の価格帯の巨大なアパレルマーケットの独占が現実味を増したからです。それにより株価が一気に上がり、PERも跳ね上がりました。利益がついてくるのはこれからです。
いかがでしたか?グロース株とは何か、投資するとどんなメリットが見込めるのか、逆に注意すべき点は何かを説明しました。かぶうさは個別銘柄に投資できない関係上、ETFに投資するしかないのですが、このバリュー株ETFについても近々、シェアしたいと思います。