世の中にたくさんETFはありますが、安定的にバンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)をオーバーパフォームするETFは多くはありません。それだけ、インデックス型ETFは強いですし、さまざまな基金や個人のポートフォリオに組み込まれているので、買われやすく売られにくいので株価も上がりやすいです。
さて、そのVTIをアウトパフォームするETFがあるとしたらどうしますか?
というわけで、今回はペット産業にフォーカスしたETF、ProShares Pet Care ETF(プロシェアーズペットケアETF)、ティッカーシンボルPAWZについて解説します。ちなみにPawは犬や猫などの手足を意味します。
VTIを上回るプロシェアーズペットケア(PAWZ)とは
プロシェアーズペットケアETF(以下、PAWZ)の株価、ETFの特徴から見ていきましょう。
プロシェアーズペットケア(PAWZ)のパフォーマンス比較
まずはじめに、PAWZのパフォーマンスを見てみましょう。
ここではVTI、VYMと比べた過去1年間のパフォーマンスを紹介します。
VYMはおろか、VTIをも大きく上回っているのが分かります。
VTI、VYMと比べ、ボラティリティが高いのが気になりますが、常にこの有力ETF2つをアウトパフォームしているのはとても優秀です。
プロシェアーズペットケアETF(PAWZ)の特徴
次に、PAWZとはどんな銘柄なのか確認していきましょう。
アイデックス・ラボラトリーズ | 10.15% |
ゾエティス | 9.73% |
フレッシュペット | 9.61% |
ディクラ・ファーマスーティカル | 8.45% |
チューイ | 8.41% |
コヴァトラス | 4.63% |
ネスレ | 4.57% |
ペットアットホームグループ | 4.30% |
メルクアンドカンパニー | 4.16% |
トルパニオン | 4.08% |
ペット産業に関連する27銘柄で構成されており、上位10社で68%を占めます。動物用医薬品やペット関連小売、ペットフードメーカーなどのペット関連セクターからなり、21%は米国外の企業で構成されています。したがって、米国を中心に欧州を含めた世界のペット産業に投資できるETFであると考えられます。なかにはネスレといった巨大企業も含まれます。
また、1%程度ですが、日本企業も含まれます。これはあらたという日用雑貨の大手卸企業です。彼らは傘下にジャペルというペット専門卸企業を持っており、この分を評価してポートフォリオに組み入れたと考えられます。
あらたの売上高は21年3月期で約8000億円ですが、ジャペルは1300億円弱。また、ネスレにおけるペット事業もほんの一部ですし、ペット産業との相関性がさほど高くない企業も一部に含まれています。
銘柄数 | 27 |
ファンド総資産(Billion) | $0.27 |
上位10銘柄構成比 | 68.09% |
外国株比率 | 29% |
経費率 | 0.50% |
PER | 36.20% |
直近配当利回り(税込) | 0.67% |
直近配当額(03/23/2021) | $0.025 |
年間平均リターン(1年) | 85.05 |
年初来リターン | 0.97 |
この1年間リターンは85.05%と抜群のパフォーマンスですが、年初来リターンはかなりのボラティリティの末、ほぼトントンという状況。また、配当は年間4回ですが、配当利回りは高くはないです。キャピタルゲインを狙う銘柄ですね。
また、2月中旬から半月ほどの期間、13%ほどの大幅下落を経験しているので年初来リターンはまだ低い水準です。
ただし、その後株価はまた上がり続けていて、下落前の水準にほぼ戻っています。
以下が、PAWZのリアルタイム株価です。
ペット産業が伸びる3つの理由
そんなわけで大きくは3つの要因、①ペット飼育頭数の増加、②ペットからコンパニオンアニマルへ、③コロナの影響、が考えられます。
ペット飼育頭数の増加
ペットを飼育する世帯数の増加があげられます。アメリカペット製品協会(APPA)によると、ペット飼育世帯比率は、1988年の56%に対し、2020年は67%まで伸びました。
同協会の調査によると、子供がいる世帯数3350万世帯に対し、ペットがいる世帯数は8490万世帯だそうです。
このことから見ても、アメリカのペット産業が、一大マーケットであること、そして有望な市場であることが分かります。
ペットからコンパニオンアニマルへ
ペットは家族ーー
こういう言葉を聞いたことはありませんか。上図のようにペットオーナーの意識は大きく変わっています。
以前ペットは愛玩動物で、一方的に人間が愛でるものでした。
しかし、その考え方は大きく変わり、「ペットも人と同じ家族の一員」と考える人が増えてきました。コンパニオンアニマルとは、ペットと暮らしを共にするより家族に近い関係性の動物という意味です。
ペットを家族の一員だと考えているオーナーは、ペットに気に入った服をプレゼントするだけでなく、誕生日をお祝いしたり、日々の健康を気遣った食事を用意したり、ビューティケアをしたり、万が一の時に備え保険に加入したりするのではないでしょうか。
それによって、ペットは高度な医療を受けるようになるわけですので、その分高寿命化します。いっそう、医療費や食費がかかってくるというわけです。
コロナの影響
コロナウイルス感染拡大の影響により、日本でも癒しを求めてペットを購入する人が増えたという報道がありましたが、これは米国でも同じです。
APPAの調査によると、2020年は3月にパンデミックが宣言されて以来、米国の約1260万世帯が新たなペットを家族に迎え入れたそうです。
このようにペットが急増したことで深刻な獣医師不足に陥っているアメリカですが、米労働統計局によれば、獣医師の数は 2029 年までに 16% 増加することが予想されています。これは他の職業の平均のほぼ 4 倍に当たります。
このように、ペット産業を取り巻く環境は非常にポジティブです。
アメリカでは2001年以降、リーマンショックなど大不況の時でさえ、ペットケア産業は伸びており、毎年成長を続けている市場です。
かなり有望な市場であることが分かります。
PAWZはどんな企業で構成されているか
ここで、PAWXにおける構成比の高い2社を簡単に見ていきたいと思います。
1つが唯一構成比10.15%を超えるアイデックス・ラボラトリーズ(IDEXX LABORATORIES INC)
コロナ前までは1株270ドル程度
コロナショックで183ドルまで急降下
現在550ドルまで急上昇
という銘柄です。
同社は、①コンパニオンアニマルグループ、②水質検査グループ、③畜産・家禽・乳製品 (LPD)グループの3セグメントからなります。
特に獣医師向け動物臨床検査で世界トップシェアを握る企業で、診断装置、ソフトウェア、検査機械などを製造・開発、トータルで獣医師のサポートをしています。したがって、獣医師の仕事量が増え、獣医師の数が増えるということは、その分彼らのニーズも増えるということを意味しています。
ついで9.73%を占めるゾエティス(ZOETIS INC)は世界最大の動物用医薬品製造メーカーです。元々はファイザーのアニマルヘルス事業部でしたが、2012年にIPO、独立した会社となり、いまの社名となりました。
株価は、以下の通りです。
コロナショック前は140ドル程度
コロナショックで100ドルまで急落
現在170ドル
長期的に見ると、2013年以降、一貫して緩やかに右肩上がりをしてきた安定感抜群の銘柄です。
ただ、ゾエティスのPERが36.6倍であるの対し、アイデックスは64.5倍と過熱感が高いです。今後どこかで調整が入る可能性は否定できません。とはいえETF全体のPERは36.2倍ですので、今後落ち着いた巡航速度で進めば、過度な割高感とはならないと思います。
ただどちらもマーケットの確実な成長性を背景に、市場で独占的な地歩を確立していますね。
今後の展望
今後、ペット×テクノロジー、いわゆる「ペットテック」がどの程度ペット市場が抱える課題を解決し、市場を活性化させるかに注目が集まっています。
PAWZの中で5番目に構成比の高いペットEC・チューイも順調に成長しています。それ以外にも、ウェアラブル端末や見守りカメラ、ペットフードのD2C(ディレクト・トゥ・コンシューマー)モデル、シェアリングエコノミー型のシッター代行サービスなど、ペット市場をさらに活性化する企業が多く現れています。
こうした企業がIPOしていくと、ますますPAWZの株価も上昇余地が期待できます。これからますます楽しみなETFですね。日本のネット証券でも早く買えるようになって欲しいですね。私はかなり買いたいと思っています。