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バフェットも値上がり予想!でも純金積立をおすすめしない理由 金投資は金ETF一択

2021年7月18日

デルタ株の蔓延が世界経済に悪影響を与える懸念と米経済でインフレが加速し金融緩和の解除を否応なく迫られる懸念、この2つのネガティブな懸念により、マーケットの先行き見通しが悪化し、不透明になっています。一部でリスクオフの動きも見られるなか、安全資産に注目する動きが出ています。今回は「金(ゴールド)」投資について考えたいと思います。

ウォーレン・バフェット、将来の金価格上昇を見越して金鉱株を取得

昨年8月、バークシャー・ハサウェイCEOのウォーレン・バフェットが、トロントに本社を置く、世界最大の金採掘会社であるバリックゴールド(Barrick Gold)へ投資したことが耳目を集めました。金鉱山株と金価格の間には大きな相関性があることから、間接的に金を大量保有したことと同じと考える人もいると思いますが、正確には「金価格が上がる」とバフェットが見ている、ということです。

金(ゴールド)を保有することと鉱山株を保有することの違いは、金価格の変動時に現れます。金価格が上がれば、金(ゴールド)の取得価格は上がりますが、鉱山株は金の採掘コストは一定なので、単位あたりのオペレーションコストが下がる(=オペレーションレバレッジが効く)点にあります。逆もまたしかりで、金価格が下落する局面では、金(ゴールド)の取得価格が下がるので安く買うことができる反面、鉱山会社は単位あたりオペレーションコストが上がります。

つまり、バフェットは金価格が将来的に上がることを見越しているというわけです。

金(ゴールド)とは何か その特徴と埋蔵量、投資メリット

かつて紙幣は、いつでも金(ゴールド)と交換できる兌換紙幣でしたが、1929年の金本位制の終焉に伴い、紙幣は不換紙幣となりました。金(ゴールド)と一定額で交換することはできなくなった代わりに、発行する紙幣の量を中央銀行が自由にコントロールできるようになったのです。したがって、国がデフォルトしたら、紙幣は紙屑になります。

一方、金(ゴールド)は、実物との裏付けがあ流ので、価値が変わりにくい上、地球上の埋蔵量が決まっているので、希少性もあります。

金(ゴールド)の埋蔵量は?

地球上に存在する金(ゴールド)の総量は23万トンと言われています。これは、すでに採掘された量と埋蔵量の2つをあわせたもので、前者は16万トン、そして眠っている残りはあと7万トンと言われています。

金(ゴールド)の年間採掘量は約3000トンですので、あと23年で枯渇することになります。しかも埋蔵されてある金(ゴールド)がすべて採掘できるとは限らないので、実際は残された金(ゴールド)はもっと少ないと考えても良いと思います。

金(ゴールド)に投資するとはどういうことか

金(ゴールド)の希少性を理解したところで、金(ゴールド)投資とは何かについて考えていきます。

金(ゴールド)は安全資産と言われています。これは、金(ゴールド)の価値が変動しないというわけではありません。金(ゴールド)の本質は、インフレやデフレなど物価の変動、貨幣価値の変動と連動した、デフォルトリスクのない金融商品と捉えることができます。

金価格(円建て・ドル建て)の推移(出所:田中貴金属工業HPよりかぶうさ 作成)

金価格(円建て・ドル建て)の推移(出所:田中貴金属工業HPよりかぶうさ 作成)

グラフは2019年1月以降の金(ゴールド)価格の月平均の推移を見たものです。コロナショック以前からずっと値上がりし続けてきていることがわかります。そして、コロナショック時も一時的に大きく下がりましたが月平均では上がり続けました。さらにFRBが金融緩和を本格化させた2020年5月〜7月にその伸び率が上がりました。その後緩やかな下落基調にありましたが、3月以降再び上昇に転じています。

ここからわかることは、2つあります。

1つは常々言われているように「有事の金」は健在だということ。他の金融資産が投げ売りされるなかで金(ゴールド)はその値段を上げ続けました。

2つめは、金融緩和により、現金の価値が漸減し続けている昨今の状況を、金(ゴールド)は正確に表しているということです。お金が市中にジャブジャブに溢れている中では、実物資産である金(ゴールド)の価格は上がります。これは金(ゴールド)の価値が上がっているのではなく、現金の価値が漸減していると見るのが正しいのです。

金(ゴールド)は価格が安定しているだけに、ジャブジャブの金融緩和がなされているいま、現金以外の資産に投資をしないと、結果的に現金の価値が目減りする=財産が目減りするという事実を認識しやすいと思います。

金(ゴールド)に投資するメリット/デメリット、特徴

金(ゴールド)のメリットとデメリットについてまとめます。

金(ゴールド)のメリット

1金(ゴールド)自体に価値がある実物資産

2債券のようにデフォルト(信用)リスクがない。ハイパーインフレになってもそれに合わせて金価格が上昇するだけで価値は維持される

3金(ゴールド)の埋蔵量が限られているので、価値がゼロになることはない

4物価上昇・貨幣価値の下落といったインフレリスクに強い

次に金(ゴールド)のデメリットです。

金(ゴールド)のデメリット

1株式や債券、預金のように配当やクーポン、利子はない

2需給変動による価格変動のみで、金自体が時間とともに利益を増大させるものではない

3金の取引は米ドルで行われるため、為替リスクがある

4金融危機などの有事の際、金は買われて値上がりしやすい(有事の際に買おうと思ったら高すぎる)

この他金(ゴールド)の特徴についてまとめます。

金(ゴールド)の特徴

1米実質長期金利と金価格は逆相関の関係

2米財政赤字と金価格は連動する

1の米実質長期金利とは名目金利から予想インフレ率を引いたものですので、米10年債利回りから10年先期待インフレ率(=ブレークイーブンインフレ率)を引いた値で算出できます。

上図(出所:大和アセットマネジメント)を見てわかる通り、米国の実質長期金利(右軸、上下反転)が下がれば下がるほど、金価格が上昇していることがわかります。ただ、実質長期金利だけが金価格決定要因ではなく、需給バランスもあります。

2のアメリカの財政赤字との連動については、米ドルの価値低下を意味するため、相対的に金価格が上がりやすいということです。

金(ゴールド)投資方法

金の投資法には以下のようにいろいろあります。

  • 積み立て
  • スポット購入
  • ETF、投資信託
  • 先物取引

金の実物資産として、積み立て、スポット購入する方法もありますが、正直、庶民にはおすすめしません。それは管理コストが膨大にかかるからです。自宅で保管すれば金はかかりませんが盗難リスクがあるのでやはりどこかに保管するのが安心ですが、保管コストがかかります。さらには預け入れ時や引き出し時に手数料がかかるので、結局年間コストがかさみます。

例えば純金大手の田中貴金属工業で金を購入する場合、購入時で市場価格に対する1.5%のスプレッドを支払うとともに、売買手数料として50gの場合8800円、100gだと16500円を支払う必要があります(500gと1kgの手数料は無料)。また売却時もスプレッドを引いた価格になる上、買取手数料を同額払う必要があります。

つまりそのコストに見合うだけの量の金(ゴールド)を保持していなければ、コスト倒れになるわけです。そうしたことから2008年までは、金投資は一般的ではなかったのです。

金(ゴールド)ETFとは

では08年に何が起こったのかといえば、ETFの誕生です。

それがSPDRゴールドシェア(GLD)です。経費率はトータルで年間0.4%ですので、現物購入とはまるで条件が違います。だから多くの人が金ETFの購入に動いたのです。

SPDRゴールドシェアにはドル建てと円建てがあります。

シンボルはドル建てがGLD、円建てが1326です。

名称 SPDRゴールドシェア
シンボル GLD 1326
為替 ドル建て 円建て
経費率 0.40% 0.40%
3ヶ月リターン 1.84% 4.90%
1年リターン 0.40% 3.64%
3年リターン 12.94% 42.03%

ドル建てと円建てではリターンが大きく違うことがわかります。近年のGLDと1326の株価推移を見ていきます。

SPDRゴールドシェアの価格推移(ドル建て・円建て)、出所:google finance

SPDRゴールドシェアの価格推移(ドル建て・円建て)、出所:google finance

このように、21年2月ぐらいまではドル建て(GLD:金色)が円建て(1326:青色)を上回っていたのですが以降逆転しています。これは為替によるもので、基本ドル建てに追随するものの、円安に触れるとき円建て金は値上がり圧力が入り、円高の時は円建て金は値下がり圧力が高まるためです。

直近では円建てが有利な局面が続いていると言えそうです。

また、先物取引「GOLD CFD」はレバレッジが使用可能です。金は安全資産ですがその価格変動は緩やか。そこで20倍までレバレッジをかけることでリスクを追求することができます。もちろん、下がれば大きな代償を払うことになります。

金(ゴールド)価格上昇の背景は 新たな投資家の流入

金価格が上昇基調にある背景には、金ETFの存在が大きいです。マーケット・ストラテジィ・インスティチュートによるとETFを介して保有される金の量は、通年で2009年に646トン増えたのが過去最高だったのに対し、20年1〜6月というわずか半年で734トン増えています。

その後も順調に続いていましたが潮目が変わったのが21年2月。金ETFはそれ以降、米国債10年利回りが上昇したことで金利のつかない金を売る動きが目立ち、流出が続いていました。ところが日経新聞によると、5月に実質金利が低下したことから、金への資金流入が再び加速しています。

金(ゴールド)のこれからと2つのリスクとは

希少性と実質金利の動向から、金価格は今後も緩やかに上昇していくことが見込まれるとともに、暴落懸念局面にあっては自身のポートフォリオに加えることでその安定性を高めることができます。

ワールド ゴールド カウンシルによれば、「年金基金のポートフォリオに金(ゴールド)を4~13%の割合で入れていたとすると、リターンが上昇した可能性がある」としています。有事の金を体現する分析だと思います。

ビットコインとの競争の影響は?

一方で今後の金価格のリスク要因としてあげられるのが、暗号資産、特にビットコインとの競合です。株式からの資金避難先として、ビットコインと金(ゴールド)が取り合う構図になると、金の資金流出に伴い価格下落リスクがある点です。ビットコインは信用の裏付けがなく、投機的な扱いを受け、価格下落局面にありますが、その信頼が回復すれば金価格の障害となり得ます。

ただ、長い目で見ると、各国が貨幣価値の裏付けのあるデジタル通貨を急ピッチで整備しており、そちらが普及することで価格のボラティリティが大きすぎて信用の裏付けのない暗号資産を持つ必然性がないと私は考えます。したがって、短中期では影響があるが、長期的には影響がないと見ます。

金(ゴールド)の希少性、その前提が変わる可能性とは

もう1つのリスク要因が、金(ゴールド)の希少性の前提の変化です。非常に薄い濃度ですが、海水中にも金(ゴールド)が含まれています。気球全体の海水量から計算すると、数十億トンの金(ゴールド)が採取可能と言われていますが、現段階ではコストに見合った採取技術は確立されていません。もし、これが将来的にコストと見合うようになると、金(ゴールド)採掘会社の株は大きく上がる一方で、金(ゴールド)の価値の裏付けに大きな影響を与えるものと思われます。海洋資産は各国がバラバラで保持するのが、原油価格のようにある程度コントロールが可能かというとちょっと微妙ではないかと思います。一方で、その技術を開発した企業は、長期的に莫大な利益をあげられるはずです。

 

そんなわけで金(ゴールド)投資は、①価格値上がりが見込める、②テーパリングを控え相場が不安定感を増すなかで、ポートフォリオに安定感を与える、という二重の意味である程度保持しておくと良いと思います。

一方で、大きなトータルゲインを稼ぐのには適していないので、投資を始めたばかりでかつ資産を短期間で大きく増やしたい人にとっては不向きです。

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