所有するのではなく、サービス利用料を払う、サブスクリプション(定期購入、以下サブスク)がビジネスの主流になってきました。新聞、雑誌、動画配信サービス、果ては服や家具まで… そんなサブスクの落とし穴は、「無駄遣い」が多くなりがちな点。サブスクを賢く使う方法をご紹介します。
今回はどうして、サブスクは無駄遣いしやすくて、しかもやめにくいのかを行動経済学に則って説明します。その上で無駄なサービスを解約して節約する方法を解説します。
サブスクリプションとは
サブスクリプション(サブスク)とは、何かを購入するのではなく、定額料金を支払って「利用」するコンテンツやサービスのことです。英語では「subscription」と言います。
雑誌や新聞などの紙媒体で行われている「定期購読」という毎月や毎日自宅に届くサービス形態が元祖。牛乳配達や生協宅配などの定期宅配サービスなんかもそうですね。そこから、「一定期間の使用権」と意味が出てきて、音楽や動画配信サービス、ソフトウェアの年間契約使用サービス(例:アドビのクリエイティブスイート)、電子書籍の読み放題サービスなどに相次いでサブスク方式が導入されました。
デジタル化によって、モノではなくサービスになり(音楽の場合CDから配信へ)、いつでもどこでも利用できる環境が整ったことと、所有から使用へというシェアリングエコノミーの流れがサブスクの隆盛を後押ししました。
企業にとってもフロー型のビジネスから安定収入が見込めるストック型のビジネスへ転換できるとともに、購入と違ってハードルが低いために新規顧客を獲得しやすい、製品として関西の状態で販売するのと違い、顧客の声を聞きながら随時改善していきやすいビジネスモデルであるため、参入が相次いでいるという背景があります。
サブスクのメリットは7つ
サブスクのメリットは、大きく以下の7点。
サブスクのメリット
- 月額料金が手頃
- 一定期間という制約はあるが「購入したのと同様の体験ができる」
- 定額で使い放題(音楽なら何万曲でも視聴が可能)
- 購入・決済が手軽
- いつでも解約できる
- 常に最新バージョンのサービスを受けることができる
- ものを増やさずに済む
このように考えると、いかにサブスクはわれわれ消費者にとって便利なサービスかがわかります。
やはり、手ごろな月額制で使い放題、それでいていつでも解約できるとなれば、財布の紐もつい緩むというものです。
サブスクのデメリットは、「メリットの裏返し」
ではわれわれ消費者側からの、サブスクのデメリットは一体何でしょうか?
それは、手軽なだけに、「本当に必要かどうか」を考える間もなく、「お試し」で始めてしまう点です。実際、多くのサブスクサービスはクレジットカード登録は必須にしつつ初月無料サービスを実施し、サービス開始までのハードルを引き下げることに躍起になっています。
金額も安いからまんまと始めてしまうのです。
でも、サブスクの本当の怖さはそれだけではありません。
あまり利用していないサービスでもズルズル契約し続けがちなところにあるのです。
どういうことでしょうか。
サブスクの本当の怖さ
サブスクの売り文句と特徴を整理してみましょう。
- 手ごろな値段
- 使い放題
- 自動支払い=支払う手間がない
- 定額制
これを言い換えるとこうなります
サブスクの特徴とその本質
- 手ごろな値段=つい契約してしまう値段、あまり痛みのない値段
- 使い放題=支払い放題
- 支払う手間がない=支払う実感がない
- 定額制=せっかくお金を使ったのだからその分使おう
1と2、3はすぐわかると思います。安いから「まあいいか」とサービス開始しやすくかつ契約放置しがちで、支払いの実感がなく、ズルズル支払い続けてしまうということです。
4はサブスクに加入して割引が得られたり、配送料無料だったり、月会費がかかっていたりすると、無理やりでも何か注文しようという「サンク(埋没)コスト」効果が働きがちだということです。
支払ったコストは戻ってこないものなのに、必要以上に重要だと考えて、「せっかく払ったのだから元をとらなきゃ」と考え、つい注文してしまったり、サービスを使用してしまいそのサービスをやめる機会を逸してしまうわけです。
使わないサービスなのに!?サブスクがやめにくい2つの理由
皆さんが契約しているサブスクサービス、ほとんど使ってないのにあるいは契約している実感すらないのに、支払い続けているサービス、ありませんか?
私はいくつもあります。月500円の電子雑誌サービス、月1000円の電子書籍サービス、月額400円のストレージサービス、etc。
はっきり言って、やめてしまっても何ら影響はないと思います。それで年間2万4000円の支出源になります。
ところが、そんなムダなサービスをなぜ私たちは簡単にやめることができないのでしょうか。
1つは「忘れている」から。このサービスムダだなと思った時にすぐやめないと、結局数ヶ月の間忘れて放置されることになり、その後も思い切ってやめるアクションを起こさない限りは、永遠に支払い続けることになります。
2つ目は「現状維持バイアスの罠」です。
「サブスクを使わないとお金のムダだ」ということを知っているのに、別に使いたいと思わない状態を、「認知的不協和」が生まれていると言います。これは、選択や行動に矛盾が生じている不安な状態を言います。
そこで思い切って解約すれば損失はそれ以上出ません。
ところが、ここで「現状維持バイアス」が邪魔をするのです。
現在の状況に固執してしまい、「このサービスが使えるとやっぱり便利だな、なくなると困るし、近いうちに利用するだろう」と考えて解約するのをやめてしまうのです。
ムダなサブスクをやめる効率的な方法
仕事でも貯蓄でも投資でも、大事なことは「見える化」です。
自分がどんなサービスを利用していて、どの程度利用しているのか、月額いくらか、利用するメリットは金額に見合っているのか、いつから使っていないのか、を一覧表にします。
そして、3つのステータスに分けます
3つのステータスに分ける
- 過去1ヶ月以上使っていないサービス
- 過去3ヶ月にわたって、月額費ほど使っていないと思えるサービス
- 使っているし使い続けたいサービス
1はやめる
2はやめる/プラン変更
3は継続
に機械的に断捨離します。
ポイントは、「値段の安さ」に関係なく、使ってないものはキッパリとやめること。
例えば、コロナで通勤の機会が大きく減った人も多いでしょう。
通勤の隙間時間に、デジタルの雑誌を読んでいた人も多いはずです。それをもし読まなくなったとすれば、それをやめると月500円、年6000円の支出減になります。
2は変更して安くなるプランがないなら、バッサリやめましょう。
「どうしても使い続けたい」サービス以外は、機械的にやめるべきです。やっぱりやりたいなと思ったら再開すればいいだけのことです。
サブスクはつい増えがちなので、半年に1回はこのプロセスを行うことをおすすめします。
また、「1ヶ月無料」で無料を楽しむだけのつもりの人は、契約更新前日までにアラームを設定して、必ず契約解除するクセをつけるといいです。
自分がどれくらいのサブスク契約をしているかによりますが、ムダを断捨離するだけで年間2〜3万円は安くなります。サブスク棚卸しのたびに「最低1つは解約する」というルールを決めると、支出も項目もスッキリします。
私もこの原稿を書きながら雑誌のサブスクを解約しました。ちょっと解約方法が面倒でしたが、年間支出を減らしてそれを投資に回すことをモチベーションにやり切った感じです(そんな大事ではない)。
もしNHKを断捨離できてそれを投資に回せたら、22歳〜60歳まで投資したと仮定すると運用益5%で280万円の資産ができている。国も年金が足りないならNHKの無料化か選択制をするのがいちばんの近道だよ。
現状維持バイアスと認知的不協和については、『9割の買い物は不要である 行動経済学でわかる「得する人・損する人」』(秀和システム刊、橋本之克著)で学びました。心理学・行動経済学のテクニックを使って、なぜ私たちが無駄遣いをしてしまうか、売り手側がどんな無駄遣いを誘発しているかが理解できます。