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現実的!金融資産わずか3000万円で「小金持ちFIRE」する方法【2つのレバレッジ活用】

2021年8月5日

空前のFIRE(Financial Independent Retirement Early)ブームが来ています。「FIRE 最強の早期リタイア術 最速でお金から自由になれる究極メソッド」がベストセラーとなったことを、日本でも三菱サラリーマンとして著名のブロガー、穂高唯希さんが実際にFIREに成功、その書籍「本気でFIREをめざす人のための資産形成入門」も話題になりました。今回はFIREブーム以前にFIREを達成した人の成功術をベースに、金融資産3000万円で小金持ちFIREを実現するマインドセットと方法論を提案します。

FIRE流行以前、FIREをめざす人が多くなかった理由

FIREが社会的な話題になったことで、FIREを目指す人、FIREを実践する人が30代を中心に増えています。

では「FIRE」という言葉がなかった時代は、同様の暮らしを嗜好する人はいなかったのでしょうか?

もちろん、そんなわけはありません。以前からさまざまな書籍がありましたし、世の中には実践してきた人が多くいました。

それでもあまり一般的ではなかったのは、

  1. 世代的な価値観の変化
  2. アーリーリタイヤのメソッドがある程度確立したこと
  3. 会社や場所に縛られずとも収入を得る方法ができてきたこと
  4. 副業を認める会社も増えてきたこと

など、FIREをめざし、実現するための素地と素養が整ってきたからではないでしょうか。

したがって、おそらくいまのようなFIREムーブメント以前にアーリーリタイヤを実現した人は、かなりの異端児という扱いだったのではないかと思います。

FIRE流行前、2008年ごろからFIREしていた人とは

そうしたなか、偶然、図書館で目についた書籍が『東南アジア月5万円らくらく小金持ち生活』(山崎初一著・ダイヤモンド社刊)。2012年9月に初版発行なのでいまから9年前ですね。

サブタイトルで標榜する「『日本で不労所得、毎日が海外旅行』を可能にする小金持ちマインド」がすべてを物語っています。

山崎さんは、日本で不動産賃貸経営を営み、そこで得られる家賃収入で暮らしています。それも物価の安い東南アジアを転々として、月5万円以下で生活しながら、3ヶ月に1度、日本に帰国するという生活を4年以上続けていると説明しています。

仕事時間は月4時間、内容は管理会社とのやりとりや銀行口座の入出金のチェックだそうです。それ以外のことで収入を得るために活動はしていないと言っています。

それ以外は、ホーチミンを中心に、ASEAN諸国の安ホテルを借りて、観光ビザで済ましながら気ままな生活をしているとのことです(注:山崎さんに関する情報はすべて、本書が出典で、現在のことではありません)。

月5万円で経済的自由を実現する2つのポイント

山崎さんの言う「月5万円の生活費で経済的自由」を実現するためには2つのポイントがあります。

月5万円でFIREのためのポイント

  1. 日本(円)で定期収入を得て、安く生活できる東南アジアで暮らす
  2. 遠隔管理できる仕組みを作り、労力のかからない収入を得る

この2点の秀逸なところは、それぞれでレバレッジ(てこ)を効かせている点です。言い換えると、より少ない労力で大きな効果を得ています。

為替と物価の格差を活用する方法

1についていえば、「為替と物価の格差」を利用しています。日本円が新興国通貨よりも安定的で強いということ、そして、日本よりも圧倒的に物価が低い国で暮らすということです。

ベトナムドンと円の為替レートの推移を見てみると、

本書出版時(2012年9月)は1円265ベトナムドンでした。

その後、円高がどんどん進み、2015年6月には1円173ベトナムドンまでになりました。

その後、いったん円安に向かいましたがそれでもピークは1円222ベトナムドン。2021年8月時点で1円211ベトナムドンとなっています。

世界3大通貨の1つ、円の相対的な強さが発揮されています。

一方ベトナムでの生活費は2012年当時、1泊640円のwifi付き宿で、ランチが80円、カフェのコーヒー1杯120円くらい。1日1500円もあれば満足な暮らしができると山崎さんは主張しています。

これではレバレッジにならないNG例

貯金を貯めて生活費の安い国を旅行して、金が無くなったら日本に戻って働いてを繰り返す人はいますが、それではサステナブルではなく、行き当たりばったりです。

また、物価の安い国に引っ越して、彼の国で働こうと考える人もいますが、物価の安い国で働けば得られる収入も激減するのでレバレッジを効かせることができません。

海外にいても円で働きやすい環境に

一方、テレワークが進む現代においては(本書が出たときとは事情が変わってます)、職種によっては現地に暮らしながら日本で仕事を受注することも、日本基準の報酬を得ることもできます。ライターやデザイナー、ウェブディレクター、ウェブマーケターなどがそれに当てはまります。おおよそ「ワーケーション」が可能な職業は、wifi環境が整っていて電気が安定供給されている地域であれば海外で仕事を受注することが可能です。

ただし、日本の仕事を受けていても、国内居住書の場合と非居住者とされた場合は源泉徴収税が2倍も違う(前者は10.21%、後者は20.42%)ので注意が必要です(居住国によって減免もあるので確認すると良いです)。

遠隔管理の仕組み化と、OPTのレバレッジとは

2の遠隔管理の仕組みについては、管理会社の力を借りて、賃貸経営を仕組み化することを提唱しています。つまり、住居のメンテナンス、家賃徴収、クレーム対応などの管理業務、空室の精算処理、リフォーム、入居募集などの業務です。日々の作業をできるだけ業務委託し、普段の突発的なトラブルは管理会社に相談して解決するというものです。

ここでのレバレッジは、「自分の時間を使うのではなく、人の時間を使う」こと。

OPT(Other People’s Time)のレバレッジと言われるものです。

おおよそ家賃の5%程度の管理費を支払うことで、時間の自由を得るというわけです。

OPTのレバレッジ、わかりやすいのは株主

OPTのレバレッジは労働者ではなく株主、投資家になるということで考えるとわかりやすいです。

株主の最大の仕事は、「株主価値(=将来にわたって稼得されるキャッシュフロー)を最大化」してくれるであろう、日々の経営を行う経営者を指名・解任することにあります。つまり、自分の代わりに会社の利益を増やしてくれる人を選ぶことが仕事で、あとの時間は経営者の時間を使うことで、自身(=株主)の利益を増やせるわけです。その分、経営者には相応の金を支払います。

そして、経営者は自身の経営戦略を実行し成果を上げられる幹部を雇用し、その幹部はその目標を実行できる部下を雇用し・・・というようにそれぞれ部下の時間をレバレッジしてより大きな成果を上げようとするわけです。

その中でも株主は、経営者を選び、経営者を監督するという仕事以外は自由に使うことができます。その代わり、経営が失敗すれば、出資した株式の価値がゼロになります(ゼロになる以上の不利益は発生しません 出資金の限度額での有限責任)。

2つのレパレッジを使えば、少ない資産で経済的自由が得られる

このシンプルな2つのことを実践することで、日本でFIREするよりも圧倒的に少ない資産で経済的自由を勝ち取ることができると思います。

山崎さんから学べる3つ目は、FIREに欠かせない要素ですが、「足るを知る」ということ。「これでいい」という暮らしを設定し、その範囲内で人生を楽しむ、あるいは、労働に時間を費やすのではなく、自由な時間を得ることに自身の価値観をおいて、優先順位を付け、切り捨てるものは切り捨てるということです。

注意すべき点は新興国のインフレと日本のデフレ

ただ、注意しなければならないのは、

日本はデフレの国、新興国はインフレの国である点です。

新興国特有のインフレ対策をしなければならない

新興国特有のインフレ対策をしなければならない

為替とインフレ率の変化によって、1円の価値は大きく変化します。

日本では物価や土地の値段はこの10年大きくは上がっていません。おそらく賃貸収入の賃料も、よほど需要が急増しているエリア以外は上がることはないでしょう。むしろ、築年数が経てば経つほど、賃料収入は減少リスクがあります。

そこで、ベトナムのインフレ率から日本のインフレ率を除いた実質インフレ率と、円/ベトナムの為替レートを調べ、2011年時点で5万円の価値をベトナムにおける20万円(=日本だと20万円くらいの消費ができる)だと仮定し、その後の5万円の価値の変動を簡易的に試算しました。

インフレ率(越-日) 為替レート 5万円の価値
2012 9.2% 266.85 ¥183,925
2013 6.3% 206.57 ¥133,992
2014 1.3% 215.58 ¥137,999
2015 -0.2% 175.84 ¥112,743
2016 2.8% 219.46 ¥136,887
2017 3.1% 205.33 ¥124,284
2018 2.6% 208.17 ¥122,857
2019 2.3% 212.89 ¥122,794
2020 3.2% 222.30 ¥124,202
2021 3.7% 210.01 ¥113,103

その結果、2011年に20万円の生活ができていたものが、2012年には18.8万円、翌2013年には13.4万円まで減りました。さらに2015年には11.3万円まで減少。その後、為替が円高に進んだこと、ベトナムのインフレ率が穏やかになったことで、盛り返しましたが、2021年8月時点では11.3万円の暮らししかできないということになりました。

2012年当初、山崎さんは5万円で十分おつりが来る生活、と言っていましたが、仮に現在もベトナムのホーチミンを拠点としているとすると、かなり苦しいものになっているのではないでしょうか。書籍の中で山崎さんも「物価と金利の関係」について説明しているので、その対策は当然立てているはずです。

インフレ対策1つ目は「南下政策」

その対策として考えられるのは2つ。

1つ目は、いわゆる製造業でよく言われるところの「南下政策」「渡り鳥作戦」です。つまり、どんどん人件費や物価の安いエリアに移行していくわけです。

例えばアパレルは製造拠点を人件費の安い国・地域に作って生産しますが、その拠点は、この20年で広東省→青島→タイ→ベトナムときて、いまではミャンマーやバングラディシュが主戦場になっています。もう残るフロンティアはアフリカぐらいと言われています。

これと同様に、「5万円で小金持ち生活」を続けていくためには、物価の安い国へとどんどん移動していくことが迫られるわけです。そうした暮らしを楽しめる方は良いのですが、多くの人には非現実的ではないでしょうか。

インフレ率の極めて低い日本(円)で収入を得ることの怖さはここにあると思います。

インフレ対策2つ目は「ドル建て資産運用」

そこで2つ目の大事なポイントは、ある程度インフレ率も加味した資産を運用し続けること。簡単にいうと、日本円だけでなく、きっちりインフレが起こっているドルで資産構築も進めることだと思います。新興国の銀行でドル建てで定期預金を組めるところを探し、そこで新興国の高金利と為替の安定を享受するということを、山崎さんも指摘しています。

私としては労働収入で得た円で米国株にも投資し、米国のインフレを含めた成長の結果としての高い利回りを得て、ドル建て資産を増やし、新興国のインフレに備えるというのが良いと思います。当然為替の問題がありますが、インフレ局面で新興国通貨の価値が大きく上がるということは考えられません。インフレとは逆に考えると通貨の価値が下がるからです。インフレで価値が下がった通貨は、長い目でみると為替レートも下がっていく傾向にあります。

レバレッジを活用した、具体的なFIRE方法と手順

山崎さんの「レバレッジ」の考えを活用して、私なりに経済的自由の確立の方法と手順を以下に示しました。こんなご時世なので、コロナ禍が収まってからというのが現実的です。

ポイント

  1. 日本円で5000万円の資産を得るまで労働+資産運用
  2. 分配利回り10%超のQYLD(NASDAQ100・カバード・コールETF)を2000万円分購入し、年間200万円の分配金(税引き後160万円)を得る
  3. VTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)を3000万円分購入 年間5%の運用で、分配金を再配当

これによって、年間120~130万円ほどで暮らせる新興国に行けば、定期的に日本に帰れる上、VTIの資産増価額がインフレヘッジになります。特に物価上昇率の低いタイ(2%以上のインフレ率は2013年が最後)などで暮らせば、資産を増やしながら、サステナブルな暮らしができるのではないでしょうか。南下政策をとることもなくなります。

また、金融資産3000万円を達成したら全額QYLDを購入。税引き後240万円の分配金を得て、毎年80万円を再投資というのでも可能だとは思います。2000万円の金融資産で全額QYLDでも住む国によっては可能かもしれませんが、バッファーがないので何かあったら即路頭に迷いそうはありますね。そう考えると、3000万円の金融資産のうち2000万円をQYLD、残る1000万円を債券ETFやVTIに投資して、年間120〜130万円で暮らせる国に住うのがより確実でしょう。

ミニマム資産でFIREのポイント

  1. 金融資産3000万円まで増やす
  2. QYLD2000万円分購入し、年間200万円の分配金(税引き後160万円)を得る
  3. VTIを1000万円分購入 年間5%の運用で、分配金を再配当

QYLDは資産形成には向かないものの、資産を使って金に変えていくという点では優れていると思うので、こういう使い方はありなのではと思います。QYLDについてまとめた記事は以下になります。

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