今回は金利について説明します。よく、米国債10年利回りが上がると、株価は下がり、利回りが下がると株価は上がると言われています。これはどういうことなのか、そもそも金利とはどういう構成で成り立っているのかについて解説します。MBAのファイナンスで最初に叩き込まれることなので思い出しながら書きました。
日本0.099%、ブラジル8.47% 金利は国で大きく異なる
金利とは、賃借した金銭に対して、対価として支払われる利率 (interest rate)のことです。
金利は信用や経済状況によって、その国ごとに異なります。
例えば2021年10月24日時点だと、
日本は0.099%(日本国債10年)
アメリカは1.63%(米国債10年)
ドイツは-0.199%(ドイツ国債10年)
ブラジルは8.47%(ブラジル国債10年)
となっています。
日本の国債利回りは低い低いと言われながらもドイツよりは高いですし、アメリカの金利水準が高いと言われていてもそれはこの1年ほどと比較して高いだけで、1.6%程度と実際は低い水準です。2018年は3%を一時超えていました。また、ブラジルの金利の高さは圧倒的です。
このように、国によって大きく異なるこの金利、一体どのように形成され、どんなファクターに影響を受けるのでしょうか?
金利の基本 名目金利と実質金利
基本的に、インフレーションによって、日々お金の価値は減っていきます。つまり、貸し手が10万円を貸したとして、時間が経つにつれ、モノの価格が上がるので、例えば1年後の10万円はいまの10万円と同じ価値はなくなります。
したがって、インフレ調整後のリターンに、貸し手は注目することとなります。
名目金利(R)=表面利率
実質金利(r)=インフレを加味した利率
インフレ率がプラスであれば、実質金利は名目金利より低くなるわけです。
例えば金利が3%で、物価上昇率が2%の場合、
100万円の預金を預けると1年後に103万円になる一方で、100万円で買えた車が102万円になっています。
その場合、名目金利は3%ですが、実質金利は1%になるというわけです。
実質金利の構成要素
実質金利にはどんな要素があるかと言えば、
- 貸し手が期待する純粋な利率=ピュアレート:rp
- 投資におけるリスクの対価=リスクプレミアム:rr
です。
この2つの要素と実質金利の関係性を式に表すと
(1+r)=(1+rp)*(1+rr)です。
つまり、ピュアレート×リスクプレミアムが実質金利というわけです。
名目金利と実質金利の関係性
次に名目金利と実質金利の関係性はどういう式で表せるのかというと、riをインフレ率とすると、
(1+R)=(1+r)*(1+ri)
つまり、実質金利×インフレ率が名目金利というわけです。
ここで問題を一つ。
名目金利が4%、インフレ率が1%の時、実質金利はいくらでしょうか?
答えは、
(1+0.04)=(1+r)*(1+0.01)ですので、r=2.97%となります。
リスクフリーレートとは?
投資をしていて、「リスクフリー」という言葉を聞いたことはないでしょうか?
これは、文字通り、デフォルトリスクがゼロ%ということで、米国債券がこれにあたります。米国債券の利回りはリスクフリーレートというわけです。
つまり、アメリカの金利において、投資家が純粋に求める利率は1.714%というわけです。
金利と株価は逆相関 その理論的説明
ようやく金利と株価の話になります。
金利が上がると株価が下がる理由は、
1.国債の金利で投資家が満足するので株式市場に資金が向わなくなる
2.株価は将来にわたって稼得されるキャッシュフローの総額を現在価値に割り引き直したものの総額なので、金利上昇に伴って割引率が下がる
ためです。
とくに、最も金利上昇の影響を受けやすいと言われるのはハイテク株に代表されるハイパーグロース銘柄です。これは、1株当たり純利益の何倍の株価かを示すPER(株価収益率)が高いこれら銘柄の投資魅力が、金利上昇によって相対的に下がるからです。
株価と米10年債利回りの関係性、とくにグロース株との関係性については、以下の記事を読んでください。より関係性がわかると思います。
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米国債利回りどこまで下がる?利上げ懸念なのに下落する理由とは 国債利回りと国債価格、金利を正しく理解する
2021年7月6日(NY時間)、米10年債利回り(米国債10年利回り)は前日比で一気に0.08ポイントも下落し、1.351%まで低下しました。その翌日にはさらに1.319%まで下がりました。 米10年 ...
ということで今回は金利についてお話ししました。
金利が上がれば必ずしも株価が下がるというわけではありません。期待先行型ではなく、実態がしっかりして着実に利益を増やせている企業は金利上昇局面でも株価は上がります。
その意味で、金利が急激に上がると企業業績に大きな影響を及ぼしますが、今後実体経済の回復とともに金利が緩やかに上がっていくことになれば、いわゆる業績相場に移行しながら、さらなる株高も期待できる局面になると思います。