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信用スコアで米国で圧倒的シェア!フェアアイザックの成長性と株価を徹底予測

2021年5月31日

突然ですが、皆さんはクレジットカードを持ってますか?

通りすがりの無職投資家
おれは持てないからな。現金一択、ニコニコ払いだよ。

JCBの「クレジットカードに関する総合調査(2020年版)」によると20〜60代のクレジットカード保有率は86.6%。いまの時代となっては、通りすがりの無職さんのような非保有者は少数派ということになります。クレジットカードを発行して良いか、限度額はいくらか、あるいは担保価値含め、いくらまでならこの人に住宅ローンを貸し出しできるか、その金利はいくらにすべきかといった意思決定は信用スコアをもとになされます。

米国において、信用スコアサービスで圧倒的なシェアを握る、フェア・アイザック社(Fair Isaac Corporation, ティッカーシンボル:FICO)を取り上げます。

この記事のまとめ

急成長企業フェア・アイザックの業績推移
3つの事業領域それぞれのポテンシャル
今後の株価予想

フェア・アイザック社(FICO)を取り上げる理由

デジタル・ディスラプション(創造的破壊)によってさまざまな既存の産業、企業が破壊され、マーケットの価値が激変しています。一方で、核心的技術を持つ企業は、自らがテックカンパニーと化して、核心的技術をテコに業界の独占者に成長することもあります。その1社として私が注目しているのが、フェア・アイザックというわけです。

簡単にいうと、ほとんどの金融機関を顧客に持ち、高度な分析技術と最新テクノロジーを使って一般消費者の「信用スコア」サービスを一手に引き受けている企業です。1956年設立の老舗企業でありながら、テック系「グロース企業」として急成長しています。

バニ子さん
ねえねえ、いくらこの会社分析しても、あんたは個別銘柄買えないんだよね!?何のためにするの?
確かに・・・まあ、趣味みたいなもの? この会社は独自性があってこの先も面白そうなんだよね
かぶうさ

フェア・アイザック社(ティッカーシンボル:FICO)とは

フェア・アイザックとは、サンディエゴに本社を置くデータ分析企業です。

産業分類
SIC CODE 7389 – ビジネスサービス, 他に特定されない
NAICS CODE 561499 – 他のビジネスサポートサービス全般

産業分類は上の通りです。特定の産業というより、ニッチなサービスを展開する企業だということがわかると思います。こういう場合、売上はさほど大きくないですが、利益率が高いことが往々にしてあります。

フェア・アイザックの企業概要 3つの事業を展開

フェア・アイザックは大きく3つの事業をしています。

  1. 信用スコア事業
  2. アプリケーション事業
  3. 意思決定ソフトウェア

フェア・アイザックが最も強さを発揮しているのが、信用スコア事業です。銀行や保険業など、アメリカの大手金融機関の9割が導入していて、融資判断で使われる信用スコア「FICO」スコアを提供しています。

これは、外部のクレジットカードヒストリー(カードの利用履歴)や各種ローンの借入残高などの信用情報を信用情報企業から得て、それを独自に分析して精度の高い信用スコアを算出して各社に提供しているわけです。

また、アプリケーション事業では、顧客管理や詐欺、回収、保険請求管理などの際に使用する意思決定のアプリケーションを提供しています。

意思決定ソフトウェア事業とは、オペレーションズリサーチの技法などを用いて、ビジネス上の複雑な意思決定を支援するツールです。例えばサプライチェーンの最適化やレイバースケジューリング、財務における適切な資産運用まで幅広い業務の意思決定を促進するサービスです。

このことから分かる通り、フェア・アイザックは、高度な予測分析手法を持ち、それをソフトウェアという形で販売したり、金融機関に対して信用スコア情報を提供するということをしている、完全なるBtoB企業です。

かぶうさ
BtoB企業は、表に出ないから知られざる企業が多いんだ。フェア・アイザックは、一般的なアメリカ人も自分の信用スコアがいくらかは興味あるから、知れ渡っているけどね。ウェブサイトに行けば、自分のスコアが確認できるよ
ふーん、このスコア良いわね。男と会った時は、提出義務付けるようにしよっと
バニ子さん
かぶうさ
・・・(こういう人、一定程度いるんだよな)

近年は、アプリケーションと意思決定ソフトウェア事業をクラウドベースで提供しており、ここに投資を注力。SaaS企業として台頭しており、契約企業数も右肩上がりです。

フェア・アイザックの売上と売上成長推移

フェア・アイザックの2020年9月期売上高は1294億ドル、対前期比11.6%増という成績でした。配当原資となる純利益は236億ドルで、純利益率は18.2%。

2016年9月期から20年9月期までの売上高CAGR(年平均成長率)は10.1%純利益のCAGRは21.23%でした。収益性、成長性、利益成長率ともに非常に高い企業と言えるでしょう。

セグメント別売上成長率(2期前比)と売上構成比(カッコ内は2期前比の増減ポイント)を見てみると、以下のようになります。

成長率 構成比 増減
アプリケーション 106.7% 47% -10%
信用スコア 157.4% 41% 7%
意思決定ソフトウェア 164.1% 13% 3%

これを見ると、アプリケーション事業の成長率が低く、いまなお最大構成比を誇るものの、その構成比はわずか2年で10ptも急減しています。なお、同事業の売上高は対前期比では0.5%の減収となっています。

一方、信用スコア事業と意思決定ソフトウェア事業の成長率は2年でともに約60%増と極めて高く、信用スコア事業に関しては売上構成比も2年で7pt増の41%まで増えました。意思決定ソフトウェア事業は伸び盛りですが構成比はまだ低いという状況です。

フェア・アイザックのセグメント別利益と利益率の推移

フェア・アイザック(FICO)は信用スコア市場で圧倒的なシェアを持つが、それ以外の事業もクラウド化により成長戦略を描く

セグメント別営業利益の推移とセグメント別営業利益率の推移を見てみます(各年9月期決算)。

2018 2019 2020
アプリケーション 26% 27% 26%
信用スコア 81% 86% 86%
意思決定ソフトウェア -34% -26% -14%

これをみると、

アプリケーション事業は収益性維持も成長性鈍化
信用スコア事業は超高収益で高成長
意思決定事業は赤字でも急成長中

ということになります。

信用スコア事業が高収益・高成長・高利益成長の3拍子揃った、成長・利益牽引事業である一方、アプリケーション事業は売上成長としては斜陽に入ったものの今後もそれなりの利益を稼いでくれそうです(少しずつ落ちていきそうですが)。最後の意思決定事業は、赤字幅がどんどん小さくなっていますので、売上が伸びていければ固定費を回収し、利益がで始めると考えられます。

そうすると短期的には、

信用スコア事業 売上・利益急拡大
アプリケーション事業 売上漸減・利益漸減か横ばい
意思決定ソフトウェア事業 売上急拡大・黒転

というシナリオが描けます。

信用スコア事業は問題ないので、意思決定ソフトウェア事業がスケールして稼げるまでに、どれだけアプリケーション事業が利益を維持できるかが重要になるかなと思います。

フェア・アイザックの今後の成長性と株価は?

ここからはフェア・アイザックの現在の株価や株価に影響を与える指標を確認した上で、利益成長予測をベースに今後の株価水準を占ってみたいと思います。

フェア・アイザック(ティッカーシンボル:FICO)の株価の状況

フェアアイザックの株価は以下の通り。


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時価総額は21年5月末時点で145億ドル。株価は506ドル程度なので、この10年で10倍になっています。

金融相場であることで株価は一気に上がっておりEPSはかなり割高水準の64.1倍まで買われています。ただ、コロナショック前の20年2月の時点ですでに株価は400ドルぐらいあったので、この時点でもEPSは60倍以上ありました。つまりこの1年の利益成長と株価成長を比べると、実は過剰じゃないんですね(元が高いからですが)。とにかくフェア・アイザックは、グロース株として見られているわけです。

今後の利益成長をシミュレーション

今後の売上・利益成長を事業別に成長モデルを作った上で、ざっくりシミュレーションしてみると、5年後にはEPSが19ドルまで増えることになります(単位:1000ドル、EPS除く、決算期は各年9月期)。

予測 2021 2022 2023 2024 2025
売上高 $1,533,835 $1,718,463 $1,906,088 $2,074,141 $2,225,693
純利益 $318,558 $380,855 $443,921 $499,203 $548,505
EPS $11.07 $13.23 $15.43 $17.35 $19.06

これは現在の延長線上で見たもので、さほど無理のある数字ではありません。また、ここからさらにものすごく大きな投資をして一時的に利益を圧迫することもあり得ます。ただそれは長期ではポジティブな先行投資となるので、そこは無視してもいいと思います。

EPSが19ドルの場合、仮にPERが適正水準範囲内の30倍まで下がったとしても株価は572ドルですので、まだまだ中期で上がる余地があります。

投資は自己責任でお願いします

急成長続くフェア・アイザックに脅威はあるのか?

この順調に見えるフェア・アイザックに脅威はあるのでしょうか?

あるとすれば、革新的なテクノロジーを使って、信用スコア解析を行うコンペティターが登場すること、もしくは信用情報のプロバイダーが大手に集約されたり、別のテックカンパニーが奪い取ることで、売り手と買い手の力関係が逆転することでしょうか。

米国では、エクィファクス (Equifax)、エクスペリアン (Experian)、トランスユニオン (TransUnion) という大手信用情報調査会社3社による寡占化状態となっています。すでにこの3社は「VantageScore」という独自のスコアリングを市場に導入していますがそのシェア率からいって、フェア・アイザックの相手になるものではありません。しかし、スタートアップのテックカンパニーも信用スコアリングサービスを出していますし、Googleなどが最新のテクノロジーを使って、革新的なサービスを開始することが考えられます。

後者についていえば、例えば帝国データバンクがソフトバンクに買収されて、東京商工リサーチも合併させるみたいな話ですが、ちょっと考えてみると難しいなと思います。

逆にフェア・アイザックが川上に進出して、信用情報調査会社を買収、再編する可能性があるのかも考えましたが、資金効率的によろしくないですね。むしろ3社に次ぐ調査機関として、Googleやアップルなどと提携してペイメント情報を得て、さらに信用スコアの信頼性を高める方があり得そうです。収益性は多少下がりますが、さらなる市場独占が見えてきていますし、アメリカは人口も増えて経済成長するので、コストは増えても利益額は増えるでしょうね。

そんなわけで、フェアアイザック、とても面白い会社だと思います。

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