かぶうさです。今回は「配当成長」と「株価値上がり」の両方が期待できる配当成長株にフォーカスした2つのETF、バンガード米国増配株ETF[VIG]とウィズダムツリー米国クオリティ配当成長ETF[DGRW]を分析し、米株式市場全体をカバーしたバンガード・トータル・ストック・マーケットETF[VTI]、高配当ETFの代表銘柄であるバンガード・ハイディビデンド・イールドETF [VYM]との比較も通して、特徴、メリット、デメリット、買い方について考えていきたいと思います。
配当成長 とはどういうことか?
まず、「配当成長」と「高配当」は異なります。「高配当」は、平均よりも高い配当利回りを特徴とする株式のことです。一方、「配当成長」とは、毎年1株あたり配当額の成長率が高い株式を表します。
配当成長のための原資となるのが純利益です。配当成長のためには、①純利益が増える、②純利益のうち配当に回す額が増える、ことが重要です。②だけで配当成長していてもいずれ頭打ちが来ますし、そもそも自社のビジネス拡大に投資できていないことになります(純利益の大半を配当に回さなければならないREITを除く)。①純利益が成長しているということが、配当成長のサステナビリティを確認する上でも重要になります。
純利益成長率が高く、配当性向が一定であれば、配当成長していくということになります。
配当性向 =(1株当たり)配当額/(1株当たり)当期純利益
高配当とは何が違うか?
前述のように、高配当とは配当利回りの高い株式を指します。
配当利回り=年間配当額/現在の株価 で示すことができます。株価に対して年間配当額が高い株式のことを指しますから、配当額が必ずしも成長している必要ありません。したがって、純利益が成長していなくても配当性向が高水準であれば高配当株ということができます。
これは当たり前のことですが、年間配当額がそのままだと株価が上がるほど配当利回りは下がることになります。現在(2021年4月25日)のような株高局面で配当利回りは下がりがちです。
例えば1株当たり配当額が年間1ドルの場合、
株価が50ドルであれば配当利回りは2%
株価が100ドルに上がれば配当利回りは1%
ということになります。
増配株式VIGと 配当成長ファンドDGRWとは
そうした中で、今回取り上げるのがバンガード米国増配株式ETF[ VIG]とウィズダムツリー米国株クオリティ配当成長ファンド[DGRW]の2つです。
増配株式VIGとは
NASDAQ US Dividend Achievers Select Index (DVG、ナスダック米国ディビデンド・アチーバーズ・セレクト指数)への連動を目指すETF。米国の中・大型株を対象に、過去10年間連続増配の普通株(REITを除く)に投資するものです。時価総額ベースで保有銘柄のウエートを算定しています。
配当成長ファンド、DGRWとは
WisdomTree U.S. Quality Dividend Growth Index(WTDGI、ウィズダムツリー米国配当グロース指 数)の価格・利回りとの連動を目指すETF。普通株式の現金配当支払いがある米国企業を投資対象としています。
VIGとDGRWの構成銘柄、セクター構成比比較
VIGとDGRWの構成銘柄、セクター構成比を比較していきます。
上位構成銘柄の特徴
VIG銘柄 | 構成比 | DGRW銘柄 | 構成比 | |
1 | JPモルガン・チェース | 3.92% | マイクロソフト | 5.17% |
2 | ジョンソン&ジョンソン | 3.86% | アップル | 4.63% |
3 | マイクロソフト | 3.84% | ジョンソン&ジョンソン | 4.49% |
4 | ウォルマート | 3.43% | ベライゾン・コミュニケーション | 4.15% |
5 | ユナイテッドヘルスグループ | 3.15% | プロクター&ギャンブル | 3.23% |
6 | ビザ | 3.07% | ファイザー | 3.09% |
7 | プロクター&ギャンブル | 2.98% | コカ・コーラ | 3.03% |
8 | ホーム・デポ | 2.94% | アルトリア・グループ | 2.97% |
9 | コムキャスト | 2.21% | シスコシステムズ | 2.71% |
10 | コカ・コーラ | 2.03% | インテル | 2.45% |
上位10銘柄計 | 31.43% | 上位10銘柄計 | 35.92% |
VIGとDGRWの上位10構成銘柄を見ていくと、両者の共通するのはジョンソン&ジョンソン、マイクロソフト、プロクター&ギャンブル、コカ・コーラの4社。言わずと知れた優良企業たちばかりです。
VIGはその他、毎年高い増配率が魅力のJPモルガン・チェースを構成比筆頭に、世界最大の小売業としていまデジタル投資が身を結んでいるウォルマート、こちらも世界最大・最強のホームインプルーブメントストア(日本のホームセンター)であるホーム・デポなどが上位に入っています。ウォルマートもホーム・デポも、アマゾンが驚異的な成長を見せるなか、牙城を揺るがすことなく対抗できている小売の雄2社となります。ちなみにマイクロソフトは、対アマゾンの観点で多くの小売業とパートナーシップを組んでおり、ウォルマートとも提携関係にあります。
VIGは多様なセクターの中から、それぞれ大手勝ち組企業を引き抜いてきた印象で、安定感、重厚感がある布陣となっています。
一方のDGRWはアップルが2位に入っているのが特徴で、その他シスコシステムやインテルなどテクノロジー関連が多いのが特徴です。金融会社は上位に入っておらず、その代わりテック系が比較的強い印象。こちらも業界の雄が集められています。
セクター別比較 バランス型のVIG、テックが強めのDGRW
次にセクター別で比較してみます。ここでは、米株式市場全体をカバーしたバンガード・トータル・ストック・マーケットETF[VTI]、高配当ETFの代表銘柄であるバンガード・ハイディビデンド・イールドETF [VYM]も一緒に比較してみます。
セクター | VIG | DGRW | VTI | VYM |
テクノロジー | 13.00% | 22.54% | 26.20% | 9.20% |
一般消費財 | 10.30% | 17.99% | 16.50% | 5.90% |
工業 | 21.80% | 18.39% | 13.80% | 10.00% |
ヘルスケア | 15.40% | 18.66% | 13.30% | 13.20% |
金融 | 13.90% | 7.53% | 11.30% | 22.40% |
生活必需品 | 16.60% | 5.92% | 4.80% | 12.50% |
不動産 | - | - | 3.40% | - |
公共事業 | 3.80% | 1.23% | 2.70% | 8.00% |
通信 | 2.20% | 4.53% | 3.20% | 7.70% |
基本素材 | 3.00% | 2.94% | - | 3.80% |
エネルギー | - | 0.43% | 2.80% | 7.30% |
VIGで最も構成比が高いのが工業で21.8%、DGRWも18.39%と高いのでこちらは両者に共通する特徴です。
大きく違うのがテクノロジーの割合。DGRWは22.54%と最大セクターであるのに対し、VIGは13%です。なお、VTIは26.2%ですので米国株式市場全体をいかにテック系がリードしているかが分かります。高配当に特化したVYMは9.2%と最も低いです。
また、VIGでは金融セクターと生活必需品セクターの割合がDGRWを大きくリードしていて、生活必需品では10pt以上高いです。ウォルマート やホーム・デポなどの小売業の割合が多いためです。一方DGRWでは一般消費財セクターの構成比が高いです。
このように見てみると、構成比が近い順にVTI>DGRW>VIG>VYMという感じでしょうか。VYMに近づけば近づくほどオールドエコノミーが多い印象です。
VIGとDGRWの概要、パフォーマンス比較
VIGとDGRWの概要、パフォーマンスを比較します。
ティッカー | VIG | DGRW | VTI | VYM |
銘柄数 | 247 | 299 | 3669 | 411 |
ファンド総資産 | $67.2 | $5.8 | $1,100 | $42 |
上位10銘柄構成比 | 31.43% | 35.92% | 22.60% | 24.10% |
外国株比率 | 0% | 0% | 0% | 0% |
経費率 | 0.06% | 0.28% | 0.03% | 0.06% |
銘柄数はどちらもあまり変わりません。ファンド総資産はVIGが圧倒的に上回っています。これは年間経費率の違いが大きく、VIG0.06%に対してDGRW0.28%ですのでその差は圧倒的です。
ティッカー | VIG | DGRW | VTI | VYM |
直近配当利回り(税込) | 1.34% | 1.83% | 1.27% | 2.57% |
直近配当額(03/25/2021) | $0.5131 | $0.0900 | $0.6716 | $0.6564 |
年間平均リターン(1年) | 44.96% | 50.80% | 62.70% | 47.66% |
年間平均リターン(3年) | 15.46% | 15.27% | 17.13% | 10.55% |
年間平均リターン(5年) | 14.81% | 15.70% | 16.66% | 11.40% |
年間平均リターン(10年) | 12.54% | N/A | 8.48% | 12.04% |
配当利回りを見てみると、DGRWの方が0.5pt高いのが特徴です。DGRWの直近配当額が低いのは、こちらは毎月分配型のためです。
この1年のリターンはテクノロジーが多いためDGRWが約6pt上回っていますが、3年、5年ではそこまで大きな変化はありません。
一方際立つのは、米国株式全体に投資しているVTIの成績の良さです。10年リターンではVIGがVTIをアウトパフォームしていますが、この5年ではVTIがVIG、DGRWを上回っています。
VTIの強さが目立つ中、VIG、DGRWを買う見逃せないメリット
このように考えると、いわゆる「良い銘柄」を選抜したVTIに投資した方が高いリターンを得られるのではないかと思いがちですが、米国株式市場全体に投資した方が高いリターンを(少なくともこの5年は)得られるということです。
一方で、見逃せないのがこのVIGのこの10年の平均リターンの高さ、12.54%。高水準で株価が成長しており、しかも安定感があります。はっきり言って、精神的安定を得る意味でも、VIGに投資する価値は高いと思います。
DGRWはテック構成比が高いので、今回のような株高の恩恵に預かれるのも特徴で、一方配当利回りも比較的高いので、株価低迷が続いても、こちらも精神的な安定を得ることができます。
実際、2014年4月から21年4月までVIG,DGRW,VTIをそれぞれ毎月3000ドルずつ買っていったとすると、ほぼトータルリターンでは差が出ませんでした。VTIは38万4200ドルでちょっとだけ抜けていますが、VIGとDGRWは36万5000ドルと36万7000ドルでほぼ誤差の範囲内と言えるでしょう。
VIGとDGRWどっちをどれだけ買うべきか?
では、VIGとDGRW、どちらに投資すべきかと言えば、より骨太で安定感を求めるならVIG、月々の配当金を得ながらグロース系の株高にも乗りたければDGRWです。特にアップルの割合が高いので、アップルがこの先も強くマーケットをリードし続けると思うのであればDGRWはとても良い投資先になります。
ただし、経費率が0.22ptも違いますので、とくにテック系の割合を高めたいという意向がなければ、VIGの方が良いのではないでしょうか。なお、株価を見るとDGRWは現在59ドルですので、ちょっとした端数で変えるお値段となっていますので、気軽に買うにはDGRWも良いと思います。
ティッカー | VIG | DGRW |
基準価格(04/24/2021) | $153.27 | $59.07 |
52週最安値(05/13/2020) | $109.64 | $41.06 |
52週最高値(04/24/2021) | $153.27 | $59.43 |
かぶうさとしては、VIG(もしくはDGRW)を米国株ETFの3割ぐらいの比率に高めても良いと考えています。
VIGとDGRW、どちらも投資する価値のある銘柄だと言えます。