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【大暴落を喜べ!】「考えない投資生活」のためのほったらかし投資のやり方とは

2021年8月30日

投資に時間をかけたくない。そんな人のために「ほったらかし投資」はどのようにするのが良いのか。最低限やるべきことは何か?今回、書籍『お金の不安から一生自由になれる 考えない投資生活』(福田猛著、2020年11月初版発行)から得た学びと、「ほったらかし投資」のための論点を解説したいと思います。

投資で成績が良い人とは?

投資で成績が良い人は「死んだ人」という逸話を聞いたことはありませんか?

実はこれ誤って広まった話で、実際はフィデリティによれば「投資したことを忘れていた人」です(ソース:Business insider)。

ただ、これの言わんとするところは同じで、カギとなるのは2つの事実です。

ポイント

  1. 「時間がお金を増やした(複利効果×基本右肩上がりの株価成長)」
  2. 「途中、大暴落や大暴騰など、手放したい局面、利益確定したい局面でも持ち続けた」

つまり、どんなに売りたい局面でも売らずに放置できる強力な「握力」を持っていて、定期的に資金を投入できれば、長い期間をかければ誰でも大きく資産を増やすことができるというわけなのです。

大暴落時、理性的に慣れないのは「人間の性」

ただ、これを実現するのは案外難しいことではないでしょうか。人は、「大暴落」が起こると、怖くなって損切りしたくなるし、「今後大暴落がくる」と言われたら、積立をやめたり積立額を減らしてしまいがち。さらに投資の勉強をすればするほど、単なる積立投資では飽きたら無くなり、「リターンが高い」と聞いてはさまざまなETFを買ったり、「これが儲かる」と言われては個別株に手を出し、売買を短期間で重ねたりするようになる…

つまり、「もっと儲けたい」という欲と、「これ以上損したくない」という恐怖に負けてしまうからです。大暴落の淵で、多くの投資家が恐怖に震えているときに大量に買って、大暴騰でみんなが阿波踊りを踊っているときに大量に売却できれば、お金を劇的に増やせます。でも、実際に、その局面で理性的に動ける人は多くはありません。

なぜなら、人間の理性は、恐怖や欲望という感情を制圧できないからです。その理由についてノーベル経済学受賞者であるダニエル・カーネマンは自著『ファスト&スロー』の中で、恐怖や欲望などに左右される直感を「ファスト(速い思考)」、計算や分析を伴う熟慮を「スロー(遅い思考)」とし、「直感」が自動的に働き、計算や分析などを経て行う「熟慮」はたまにしか働かないとしています。

つまり、人は極限状態であればあるほど、理性にしたがって行動することが難しいわけです。

もちろん、そうしたなかでも理性にしたがって動ける人はいますし、一般人でもあらゆるシチュエーションを予想し対策を立て、たくさんの暴落を経験すれば、投資において賢く振る舞うことはできるかもしれません。

でも、そこにそれだけの時間を費やしたくない人がほとんどでしょうし、そんなにストレスを抱えてまで投資をしたくないと考える人が多数派でしょう。

そこで本書『考えない投資生活』では、「売ったり買ったりするほど富は逃げていく」と指摘し、「考えなくていい、忘れていていい、気付いたらお金が増えている、超シンプルな投資」を提唱しています。

「ほったらかし」は簡単ではない

「ほったらかし」投資は思ったほど簡単ではありません。

自分のモチベーションにするためには、月々の残高をチェックして見える化したいところですし、儲かっていたら買い増ししたくなるからです。

そこで、「ほったらかし」投資の効率の高さを認識してもらうために、著者は以下のようなことを解説しています。

ポイント

・暴落が起こっても平均で20ヶ月で回復している
どんなに落ち込んでも2年ぐらいで株価が戻ると分かっていれば、余計な投資行動をせずにほっとける。

・プロでも短期(1ヶ月〜1年)の相場予測はできない
予測が不可能とわかれば、無駄な時間を使わなくなる

・世の中には実力でなく運だけで億万長者になる人もいる
その人の本を買っても真似したいと思う人はいるだろうか?
(補足 これは、再現性や普遍性はないという意味でしょう)

・AIでマーケット解析・運用することについて
これが圧倒的に儲かるなら外部に教えるはずがない

など

この辺は元証券会社の人間らしく、「売り手」の論理と実態を知った上での、我々個人投資家へのアドバイスだと思います。

投資信託が「ほったらかし投資」にふさわしい理由

そうしたなか著者が提唱するのが、投資信託の積立による資産運用方法。

派手さはないけど、知識がなくても手元資産が少ない人でも投資が可能で、①長期間運用できて、②資産が継続して増えていく着実な方法だとしています。

とくに落やショックを恐れず、喜べるのが投資信託のすごさ、だと力説しています。購入価格が高い時は口数が減るので買いすぎを抑えられる一方、積立投資は好景気が続くよりむしろ、価格が途中で下がることの方が重要、その分口数をたくさん買えるからです。したがって、右肩上がりよりも「U字型」でチャートが推移する金融商品が狙い目としています(ただし、そんな都合よく「U字型」を見つけられるのか、と私は思います。しかもU字型の銘柄の紹介は本書内ではとくにありませんでした・・・)。

また著者は、投資信託の中でもインデックスファンドとアクティブファンドの両方をミックスさせた形での投資を提唱しています。

「インデックスは優秀だが、安心できるレベルのリターンが得られるかはわからない」

「アクティブファンドはプロに丸投げしてほったらかしにしておける方法」

だからこの両者を組み合わせるのが良い、と説明しています。ここは論点になると思うので後述します。

 

金融商品の選び方のコツは、1新商品に手を出さない、2人気ランキングを信じない、3商品ではなく人に投資する、の3つ。

1は、カップヌードルでも、長く売れ続けるのは定番で、新商品は変わり種や流行りに乗っかったもので1〜2年で消えていくもの。金融機関の商品開発も同じだと言います。

2の人気ランキングは過去のパフォーマンスがよかったものばかりなのであてにならない

3ファンドマネジャーの腕の良し悪しで結果が大きく変わるから、としています。

 

本書の良いところ 投資の基本としての心構えを押さえられる

本書の良いところは、「投資の基本」としての心構えを押さえられる点です。Twitterなどで「この銘柄がすごい」と大儲けしている銘柄を買ってドヤった挙句、ちょっとした調整局面で手放している人が少なくない印象です。「目線を遠くに置く」などのパニック時に心える3つの鉄の掟なども紹介しています。

また、流行り廃りの激しいテーマ型は買ってはいけない、元本が削られている(いわゆるタコ足)のもあるから分配型はNGなども初心者の人は知っておいて損はないものばかりです。

本書のここが残念 アクティブファンドを推奨する理由が希薄

一方、微妙なところとしては、

インデックスとアクティブのミックス投資を提唱しておきながら、その割合には一切触れられていない点。目安すらないので、著者の職業であるIFA(独立型フィナンシャルアドバイザー)に依頼することが前提かのように思えてしまいます。

また、アクティブファンドをなぜ推奨するのかの理由もはっきりしません。本書でも、優良なアクティブファンドは圧倒的に少なく、「日本株を10年以上運用しているファンドでTOPIXを年率3%以上上回っているのは5%以下のファンド」としています。さらに、金融商品の選び方のコツとして挙げた、「人気ランキングを信じない」(理由は過去の成績は当てにならないから)というのも矛盾します。

以前、私は「インデックス投資にするべき5つの理由」で

  • アクティブファンドは明確な差を出せていない
  • この先「勝つファンドマネジャー」が誰かは誰にもわからない
  • 勝つファンドマネジャーを探す時間と手間がかかる

ことを指摘しています。これに対する明確な回答がないのです。

インデックスファンドとアクティブファンドの違い インデックス投資にするべき5つの理由

アクティブファンドとインデックスファンド--。1976年にバンガードが指数連動型のインデックスファンドを立ち上げ、その扱い高が増えていって以来、常に、「アクティブ(積極)運用かパッシブ(受け身)運用か ...

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つまりアクティブファンドの優位性を示せていないにも関わらず、本書では11のオススメ投資信託を示しているうち、実に8つがアクティブファンドなのです。

であるならば、良いアクティブファンドの見つけ方と8つのファンドを今回私が推奨する理由とリターンなどの選択基準に紙幅を費やすべきだと思います。残念ながら、各ファンドの解説文は極めて短く、選択理由が不明です。

これを読んだ投資初心者の人が、いきなり訳もわからずアクティブファンドを買うシーンはあまり想定できず、ましてやインデックスと比べて10〜20倍の手数料を支払う合理性もあまりピンとこないのが正直なところです。IFAを活用することを前提としているのでしょう。

一方、紹介している3本のインデックスファンドはいずれも「全世界」型の投資信託で、これは私も賛成です。ただ、オールカントリー系は基本、手数料が安いものを基準に、何を選んでも良いと思います。

「ほったらかし」は人生の時間を別のことに使える

おそらく、「インデックスファンドでOK」ということであればIFAの存在価値を示せないし、コストの低さが強みのインデックス投資をする人がIFAコストの上乗せを容認するとは思えないので、そこに「大人の事情」があるのだと思います。

ただ、アクティブファンドのところを除けば、

できるだけ時間をかけず

精神的にも健やかな気持ちで投資が続けられ

積立投資の恩恵を十分に得られる、という

筆者の投資法(つまり、私が納得したのは、ドルコスト平均法によるインデックス積立投資、ということなわけですが)は、

多くの長期投資家の投資ポートフォリオのベース部分となると思います。

何よりも、人生は有限なので、投資にかける時間は最低限にして、他のことに時間を掛けたいという人には最適です。

 

その意味で、本書は一読の価値はあると思いますし、市況が悪いときに読み返すと心を落ち着かせられると思うので、本棚においておく価値もあると思います。

一方で、本書で強く推奨しているお金の専門家であるIFAに相談する必要性は、私は感じませんでした。なぜなら、本当に信頼できるIFPを探すことは簡単ではないと思うからです。また、最初に投資の勉強をすれば、IFAに相談する必要もなく、一度決めた投資方針を貫いていけばいいだけだと思います

ちなみに本書がそうだとは言いませんが、書籍には、有名出版社が出したものでも、著者からお金をもらってつくっている「受託型出版」が結構多いので注意が必要です。会社の販促費として書籍を作ってばらまけば顧客に信頼してもらえるし、別の何かメディアの目に留まり、自社の名前が広がるチャンスになるからです。

ただし、こうした受託本だから中身がよくないということは実はありません、より良い宣伝ツールになるよう、著者は必死で原稿を書いています。むしろお金を掛けている分だけ、より役立つ中身にしようと思っているケースが多いです。ただ、編集者が「これは売れる」と自信を持って企画したものではない、というだけです。

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