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似てるようで全然違う高配当ETF対決、SPYDとVYMはどちらを買うべきか?株高局面でも買いやすい?

2021年4月13日

かぶうさです。今回は人気の高配当ETF2つを比較して、どちらを買うべきか、その特徴、長所、短所、リターンを見ていきたいと思います。SPYDとVYM、同じ高配当ETFでもその中身はかなり違います。
ETFとはExcahnge Traded Fundの略で、上場投資信託のことです。まずETFの詳細と投資信託の違い、そのメリットとデメリットについて知りたいという方は、この記事をご確認してから本記事をお読みください。

SPYDとは

「SPYD」とはティッカー名(日本株式の銘柄コードにあたる、個々の銘柄を区別するためのアルファベットで表された記号)で、正式名称はSPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF(SPDR ポートフォリオ S&P 500高配当ETF)と言います。

S&P 500 High Dividend Index(S&P500高配当指数)に連動する投資成果を出すことを目的とするETFです。この指数はS&P500のうちの80の高配当企業のパフォーマンスを測定するように設定されています。構成銘柄のサイズに関係なく、パフォーマンスを最もよく表すよう、「均等」に重み付けしたものです。

SPYDとはどんなETFなのか

では、このS&P 500 High Dividend IndexをベンチマークとするSPYDはどんな銘柄で、どんな特徴があるのでしょうか。VYM(Vanguard High Dividend Yield Index Fund ETF)と比較しながら見ていきたいと思います。

ティッカー SPYD VYM
銘柄数 78 411
ファンド総資産 $3.1  $42 
上位10銘柄構成比 14.33% 24.10%
外国株比率 0% 0%
経費率 0.07% 0.06%
SPYDとVYMの概要①

まず、SPYDの構成銘柄数は78銘柄となっており、411銘柄で構成されるVYMと比べると分散されていません。ETFの中ではそれなりに銘柄が絞り込まれている商品だと言えるでしょう。

また、ファンド総資産もVYMと比べると圧倒的に少なく、わずか$3.2billion(32億ドル)しかありません。VYMの実に1/13の規模しかないわけです。

となると経費率も気になってきます。総資産規模が小さい方がスケールメリットが出にくいためです。意外に経費率は0.07%とVYMと比べるとわずか0.01pt高いだけですので、優秀だと思います。ちなみにVTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)と比べる総資産規模はわずか1/354とスモールサイズ、それでいて経費率は0.04ptしか差がありません。

SPYDとVMYどちらを買うべきか?

SPYDはどんなセクター構成でどんな銘柄で構成されているのか

次に、SPYDはどのような銘柄で構成されているのか、そしてどんなセクターの構成比が高いのかを見ていきます。

セクター SPYD VYM
テクノロジー 6.73% 9.20%
一般消費財 3.90% 5.90%
工業 - 10.00%
ヘルスケア 3.31% 13.20%
金融 23.96% 22.40%
生活必需品 5.31% 12.50%
不動産 18.38% -
通信 6.33% 7.70%
エネルギー 13.98% 7.30%
公共事業 13.20% 8.00%
基本素材 4.90% 3.80%
セクター別構成比

セクターを見てみると、金融が23.96%と高く、VYMにはほとんど含まれない不動産が18.38%を占めるのが特徴(Market Watchなど、不動産も合わせて金融と分類しているところもあり、その場合金融の構成比は4割を超えます)。ついで、エネルギーの13.98%、公共事業の13.2%が続きます。テクノロジーの構成比は6.18%で、VYMの9.2%よりさらに低いです。また、テクノロジーといっても、SPYDが保有するのはVYMと同様に、GAFAMのような急成長する巨大テック企業ではありません。

SPYDで構成されている銘柄は高配当銘柄。配当せずに事業投資に回す高成長企業ではありません。SPYDを構成する銘柄は配当や自社株買いに回した方が結果的に株主が稼得できるキャッシュフローを最大化できる企業が多いと言えます。

また、SPYDは前述したように、特定銘柄の構成比が高いわけではありません。各銘柄の構成比はほぼ一緒ですので大体1%強ずつ保有していることになります。その中でも、銘柄構成比上位10社を見ていくと、トップのホーリーフロンティアが1.52%、2番目がバレロ・エナジーが1.51%で、いずれも石油精製・販売会社です。3位は金融のピープル・ユナイテッド・フィナンシャルで1.49%です。このようにあまり日本では馴染みのない企業が銘柄に組み入れられています。

  銘柄 構成比
1 ホーリーフロンティア 1.52%
2 バレロ・エナジー 1.51%
3 ピープル・ユナイテッド・フィナンシャル 1.49%
4 シーゲート・テクノロジー 1.43%
5 コノコフィリップス 1.42%
6 ゼロックスHD 1.41%
7 ヒューレット・パッカード 1.40%
8 マラソン・ペトロリアム 1.40%
9 サイモン・プロパティ・グループ 1.38%
10 リージェンシー・センターズ 1.37%
SPYDを構成する上位10銘柄

有名企業で言うと、ゼロックス・ホールディングスやヒューレット・パッカード、エクソン・モービルなどでしょうか。また、米独立系石油会社最大手のマラソン・ペトロリアムは名前を聞いたことがある人もいるかもしれません。去年ぐらいに日本でもニュースになりましたが、コンビニ事業を日本のセブン&アイ・ホールディングスに売却したことで名前が挙がりました。

ちなみにアメリカのコンビニは、住宅街や都心部に大量出店している日本のコンビニとは似て非なる業態です。基本的には、ガソリンスタンドに併設するかたちで店舗網が構築されています。だから石油会社がコンビニ事業を行っているわけです。

このほか、不動産開発・管理を行うサイモン・プロパティ・グループも組み入れられています。商業施設に強く数多くのショッピングセンターを手がけているのが特徴で、日本でも三菱地所と一緒にプレミアム・アウトレットを展開していると聞けば、「ああ」と言う人も多いのではないでしょうか。

配当利回りは?

直近配当利回りを見ていきます。

なお、配当利回りとは購入株価に対して、年間いくらの配当金を稼得できるを表した数値です。

計算式は、

配当利回り(%)=1株あたり年間配当額/1株購入価額*100

です。

VYMが2.93%に対し、SPYDは5.82%ですので、約2倍の配当利回りを確保していることがわかります。「配当利回り」ではSPYDに軍配が上がりますね。

現在SPYDの株価は、VYMの株価の1/2.5程度です。2021年4月11日時点の株価はVYM102.56に対して、SPYD39.17。SPYDは断然に買いやすいお値段だと言えます。投資信託以外でお小遣い感覚の金額で買い増していけるという意味では、とてもお手軽なETFなのではないでしょうか。

ティッカー SPYD VYM
直近配当利回り(税込) 5.82% 2.93%
直近配当額(03/25/2021) $0.6400  $0.6564 
年間平均リターン(1年) 65.77% 47.66%
年間平均リターン(3年) 7.93% 10.55%
年間平均リターン(5年) 8.91% 11.40%
年間平均リターン(10年) - 12.04%
SPYDとVYMの概要②

一方で、この株高局面でも配当利回りが高いということは購入価額があまり上がりにくい=キャピタル・ゲインはあまり期待できないということも意味します。

実際、VYMは10年で株価が約2.3倍となっている一方、SPYDは2015年の上場以来、約33%程度の値上がりに止まっています。ちなみにコロナショックの時は、上場来最低株価を記録しています(24ドルを割り込む)。

SPYDの年間リターンは?

次に年間リターンを見てみると、

3年平均、5年平均はそれぞれ7.93%、8.91%と、VYMの10.55%、11.40%と比べ ると見劣りします。

次にポートフォリオ・ビジュアライザーを使って2つの銘柄を分析してみます。 SPYDが上場した2015年11月から2021年4月まで毎月3000ドルずつ購入していき、配当金を再投資に回すと、、

SPYD上場の2015年11月から毎月3000ドルずつ購入した場合の金融資産推移 赤がVYM、青がSPYD by Porifolio Visualizer

VYMが$291,268に対し、SPYDは$274,929という結果になりました。

実は2016年はSPYDの年間リターンが上回りましたが、2017年、2019年はVYMがアウトパフォーム、さらに2020年はSPYDが大きく落ち込んだのに対して、VYMはかろうじてプラスリターンを確保しました。再び2021年には金融銘柄などの好調を背景にSPYDが大きく上回ったもののトータルリターンでVYMを勝るには至りませんでした。

下の棒グラフは年間配当額 SPYDの配当額の高さがわかる by Portfolio Visualizer

もちろん年間配当金額の推移を見ていくと同じ高配当のVYMを大きく上回っているのが特徴。2020年は年間配当だけで1万ドル近くを稼ぎ出しているかたちとなります。

なお、コロナショック後の20年4月以降に限ったパフォーマンスを比較すると、SPYDがVYMを凌駕しています。やはり金融、不動産などコロナで打撃を受けた銘柄の戻りが強い分、好結果となっています。

結論どちらを買うべきか?

目に見える配当金のモチベーションは、長く投資を続ける上で非常に重要です。とくに株価が上がりにくい、あるいは下がっている局面で多額の配当金を得られるのは、精神衛生上良いでしょう。しかし、キャピタルゲインが見込みにくいこと、金融などが多いので不況期は一気に落ちることが予想されることから、あえてVYMではなくSPYDを選ぶ理由はそれほどないのかなというのが私の印象です。

ETF投資に限定され大きなキャピタルゲインを得る機会に乏しい私の場合、やはりVYMに軍配を上げたくなりますが、より配当をモチベーションに、安定的なキャッシュインフローの確保を目的に投資される方にとってはSPYDは非常に大切な相棒になることは間違いないでしょう。VYMもそうですが、株高のいまの状況でも割高感を感じないというのも、買いやすい銘柄だと言えるのではないでしょうか(これは気持ちと利回り構成の違い、の問題ですが)

  • B!