ポートフォリオの利回り向上を狙って、分配利回りの高いREIT(不動産投資信託)をポートフォリオの中に組み込もうとしている人は多いはず。特にグロース株が難しい局面ではなおさらです。しかし、REITには多くの人にとってなじみ深い、いわゆる普通に不動産を所有するREIT(エクイティREIT)と実態としては不動産を所有するのではなく債券投資であるモーゲージREITの2種類があります。本稿ではモーゲージREITとは何かについて詳しく説明します。
モーゲージREIT とは
REITには大別して、エクイティREITとモーゲージREITの2種類があります。エクイティREITは不動産を所有して賃料収入を収益とするREIT。一方モーゲージREITは、不動産担保ローン(モーゲージ)やモーゲージを担保とする証券(MBS:モーゲージ担保証券)に投資するREIT。主には住宅ローンとなります。これは、われわれ消費者が住宅を購入する際に住宅ローンを組成するわけですが、この住宅ローンを担保として発行された債券となります。つまり、不動産の証券化がREITなわけですが、住宅ローン債権の証券化が、モーゲージREITが保有するモーゲージということになります。
モーゲージREITの儲けの仕組み
モーゲージREITは、投資家から集めた資金を使ってMBSを購入、さらにMBAを担保に出して、資金を調達し、その金でMBSをさらに買います。
つまり、購入したMBSをどんどん担保に回して資金を調達してMBSをさらに買っていくというわけです。簡単に言えば、投資家から集めた金をレバレッジ をかけてMBSに投資するということになります。
モーゲージREITの収益は、
MBSによって得られる利回り – MBSを担保として調達した資金の利回り
となります。
したがって、調達金利が低ければ低いほど高い利益率が得られるというわけですが、それでも基本的なスプレッドは小さいので、レバレッジ をかけて魅力的な投資商品に仕立てているわけです。そして、それゆえ、高分配利回りの源泉となるとともに、リスク要因になります。
モーゲージREITの収益性
モーゲージREITの特徴は、分配利回りが高い点です。
キメラインベストメント、9.68%
ペニーマック・モーゲージ、11.52%
インベスコ・モーゲージ・キャピタル、13.90%と軒並み10%〜それを大きく超える水準です。
だからと言って、トータルリターンが高いかというとそういうわけでもありません。直近1年は調子が良くともコロナショックを含めた過去3年間では悲惨な数字になっています。
この3社の直近1年の年間リターンは、キメラ+36.75%、ペニーマック -3.26%、インベスコ-25.23%となっています。キメラインベストメントの大幅プラスが目立ちます。
では、そのキメラインベストメントはコロナ前と比べてどうなのか?と言えば、以下の通り、VTIと比べるまでもなく、コロナ前の高値にはまだ及びません。それでも他のモーゲージREITと比べると、コロナショックから順調に立ち直った印象です。
モーゲージREITの抱えるリスク
モーゲージREITのリスクは
短期の調達金利上昇に弱い点 です。
調達金利が上がると、長期の債券利回りとの差が縮まるため、利ざやが極度に小さくなります。つまりただでさえ薄いスプレッドがさらに薄まるわけです。そのままだと利益が出せませんからさらにレバレッジ をかけることになります。
さらに金利上昇局面などの景気転換点で一時的にイールドカーブ(長短金利差)で逆転が起こると、「逆ざや」状態になり、レバレッジ 分だけロスが拡大するわけです。
またレバレッジ をかけているがゆえ、コロナショックなどで金融機関が急な融資引き締めをする局面では大きなリスクにさらされることが多いようです。モーニングスターの報道によると、コロナショック時、レバレッジ を多用するモーゲージREITを運用するインベスコ・モーゲージ・キャピタルは「複数の資金調達先から求められた追証を履行できなかったと発表し、株価は同日に50%近く急落していた」としています。
上図はそのインベスコ・モーゲージ・キャピタル(IVR)のパフォーマンス推移です。コロナ前まではVTIとほぼ互角のパフォーマンスでしたが、大きく明暗を分けました。コロナ禍での落ち込み幅が全然違い、その後も全く良いパフォーマンスを出せていません。
なおモーゲージ債自体のリスクについては、リスクフリーの米国債よりは利回りは高く、社債よりは利回りは低い、つまりリスクは国債以上社債未満、というのが基本的な認識です。
モーゲージREITについての評価
モーゲージREITはコロナ前はとてもパフォーマンスが良かったです。しかし、有事に弱すぎるのと、長短金利差の縮小、逆転時に収益性が大きく悪化するため、何かあった時の負のボラティリティが大きすぎます。金利が安定している局面では良いパフォーマンスを発揮するのですが、それでは長期保有には向きませんね。とは言え、高配当銘柄なのでそんなに短期で持ってどうこうというわけでもありません。中期的に平穏なときに余剰資金で遊んでみるぐらいが向いているのではないかと思います。無論、詳しくない人が下手に手を出していいものではなく、それなりに熟知した人が遊ぶ分には配当利回りも高いしよろしいのではないかと思います。