みなさんは宝くじを買っていますか?私は子供のとき、親が買ってくるスクラッチくじが大好きでしたが、大人になったいま、これを買おうとは思いません。理由は、元本割れ、つまり自分が投じたお金が減額されて帰ってくることが約束されているからです。圧倒的に成功確率の低い賭けと言えるでしょう。なんとなく肌感覚で割の悪いものだと思っている方も多いと思いますが、今回は数値できっちり表したいと思います(本稿は趣味として宝くじを楽しむ人を否定するものではありません)。
宝くじの仕組み
宝くじは、総務省が所管省庁となっている、都道府県および指定都市全67団体が発行主体で行う事業です。収益金は、発行地域の都道府県および指定都市に帰属するもので、収益金は公共事業等に充当が可能です。
発売元である自治体は、受託銀行に宝くじ券の作成や、宣伝、売りさばき、当選発表、当選金の支払いを丸投げし、受託銀行の取り分を除いた収益金を受け取るというビジネスです。
宝くじの収益金は、地方財政法などに規定される事業にのみ使うことができ、公共事業や情報化事業、災害対策事業などと明記されています。
「収益金」と言っている時点でわかると思いますが、宝くじは自治体にとって、必ず儲けられる「収益事業」です。それも、極めて高い利益率を確保することができます。
宝くじの控除率
事業者、いわゆる胴元に配分されるお金(テラ銭)の割合(控除率)がどれだけかを他のギャンブルと比較してみると、宝くじの異常性がわかります。
各ギャンブルの控除率
ルーレット(アメリカ):5.02%
パチンコ:10%程度
競馬や競輪などの公営賭博:25%
宝くじ:50%程度
例えばパチンコの場合、1000万円をみんなで出し合って900万円を参加者で奪い合うという形になります。しかもパチンコ店の設備投資、パチンコ代や空調、綺麗な空間の維持と言った費用はすべてパチンコ店持ちです。
一方、宝くじの場合は、1000万円をみんなで出し合ったとして500万円を参加者で奪い合う形になります。紙を刷って売りつけるだけで胴元は半額を持っていくという、清々しいほどぼろ儲けのビジネスなのです。
宝くじの期待値
実際に宝くじの期待値はいくらなのか、サマージャンボ宝くじとサマージャンボミニを例に計算したいと思います。期待値とは確率変数のすべての値に確率の重み付けをし、その結果得られる平均値のことです。
平たく言えば、サマージャンボを1回買ったらいくら分当たると考えられるか、を示したものです。
サマージャンボ | サマージャンボミニ | |
発売額 | 690億円 | 210億円 |
価格 | 300 | 300 |
発売枚数 | 2億3000万 | 7000万 |
サマージャンボとサマージャンボミニの概要はこのようになっています。それぞれ発売総額が出ているので、価格で割って発売枚数を求めています。
また、当選確率は本数÷発売枚数です。
サマージャンボ宝くじの低い期待値
金額 | 本数 | 当選確率 | 期待値 | |
1等 | 500,000,000 | 23 | 0.00001% | 50 |
前後賞 | 100,000,000 | 46 | 0.00002% | 20 |
組み違い賞 | 100,000 | 2,277 | 0.00099% | 0.99 |
2等 | 10,000,000 | 46 | 0.00002% | 2 |
3等 | 10,000,000 | 230 | 0.00010% | 10 |
4等 | 50,000 | 2,300 | 0.00100% | 0.5 |
5等 | 10,000 | 230,000 | 0.10000% | 10 |
6等 | 3,000 | 2,300,000 | 1.00000% | 30 |
7等 | 300 | 23,000,000 | 10.00000% | 30 |
サマージャンボ宝くじの期待値 | 期待値合計 | 153.49 |
上が、サマージャンボの期待値になります。
1等の当選確率は1000万分の1です。2等は500万分の1ですが、連番で買っていれば自動的に当たるはずというものです。7等賞の300円(投資元本とおなじ)は10%とそれなりに当たるかなという確率になっています。
それらをすべて足し合わせた期待値は、わずか153.49円です。
ざっくりと、投資元本が半分になるのが宝くじというわけです。夢を見られる代わりに相当非合理な確率となっています。
さらに低い!サマージャンボミニの期待値
では、サマージャンボよりも当選確率が高く当てやすいと言われているサマージャンボミニはどうでしょう。
金額 | 本数 | 当選確率 | 期待値 | |
1等 | 30,000,000 | 28 | 0.00004% | 12 |
前後賞 | 10,000,000 | 56 | 0.00008% | 8 |
2等 | 50,000 | 21,000 | 0.03000% | 15 |
3等 | 10,000 | 280,000 | 0.40000% | 40 |
4等 | 3,000 | 700,000 | 1.00000% | 30 |
5等 | 300 | 7,000,000 | 10.00000% | 30 |
サマージャンボミニの期待値 | 期待値合計 | 135 |
1等250万分の1、2等125万分の1です。確かにサマージャンボよりは確率は高いですが、ほぼ大差ないぐらいの確率の低さであることに変わりはありません。注目したいのは、期待値の低さです。サマージャンボの1等と比べて低く設定されています。これは、確率の低さに比べてサマージャンボミニ1等で得られる3000万円という対価が低すぎることを意味しています。
その結果、すべてを足し合わせた期待値は、なんとサマージャンボよりも低い、135円になりました。
「サマージャンボより当たりやすい」と煽る一方で、期待値を低く設定(つまり、胴元がより儲けやすい)するサマージャンボミニ。はっきり言って情弱市民から貪りとろうとしているとしか思えません。
ただ、宝くじが巧妙なのは、「夢を買う」ものだから、外れて当然という気持ちでお客が買う点です。だから、当然クレームも起こりませんし、繰り返し購入するファンが多くついているのです。極めて、マーケティング的によく出来た商品だと思います。
20%程度?実際のリターンが低すぎる残念な理由
サマージャンボのリターンは51%ですが、実際のリターンはそれよりも低そうです。宝くじシミュレーターというサイトが色々あるのですが、そちらで実際にシミュレーションをすると購入枚数800枚ぐらいまでは回収率(リターン)20%未満をウロウロ、2万本を超えると25%ぐらいに上がります。それでも51%には程遠いですね。1000万円分(3万3333枚)買ってようやく回収率が26%。実はこれ、宝くじ総数に対して購入する枚数が少なすぎるためです。相発売額が690億円ですので100億円分ぐらい買えば、もれなく50億円帰ってくることになると思います。これを「大数の法則」と言います。
そんなわけで、私はやるだけムダというかドブに捨てているようなものだと思いますが、一瞬でも夢をみたいという人にとってはいいのかもしれません。買わなければ当たりませんし、実際に当たる人がいるのも事実ですからね。「5億円当選の夢を見る対価として数千円を払う」ということに対して、割に合うと考えている人が多いから、毎回よく売れているのだと思います。別に不況だから売れる/売れないとか好景気だから売れる/売れないということも聞きませんし。
また家族のコミュニケーションツールとして使いたい人もいると思うのでそういう用途もいいと思います。宝くじが趣味と言う人、些細な楽しみと言う人もいるでしょうから、それを否定するものではありません。
「バラと連番10枚ずつ買って6000円で夢が見れるなら安いもの」
そう考えると、宝くじも悪いものではないのかもしれません(私は買いませんが)。