FIREを実現できるのは比較的高年収の人たちだけではない。そのことを証明するため、今回は30代からFIREに向け動き出すとして、年収400万円、500万円の世帯が何年後にFIREできるかを試算してみました。
30代から準備を始めるFIRE 前提条件の設定
今回は、今後一切働かない完全FIREを前提とします。
また、世帯構成は夫婦2人世帯、そして独身1人世帯の2パターンで考えます。
年収は400万円と500万円の2パターン(途中で年収は変わらない)で、退職金は一律500万円、1000万円の3パターンとします。持ち家ではないと仮定します。
スタート年齢は31歳。
流れとしては、世帯あたりの消費支出を明らかにした上で、年間投資に回せる金額を設定、その上で、最短何歳でFIREできるかを算出していきます。
世帯消費支出の計算
世帯あたりの1ヶ月の消費支出を算出します。
まずは総務省の2020年度、2人以上世帯の家計消費支出を確認します。
それによると世帯人員は2.95人で、消費支出は26万7000円。
全国平均であることに加え、持ち家比率が高いため、住居費が低い一方、色々と無駄な出費も多い印象です。
以下がその支出内訳です。
世帯平均(2人以上) | |
消費支出 | 267,000 |
住居 | 16,000 |
水光熱 | 17,000 |
食 | 80,000 |
家具 | 14,000 |
被服 | 9,000 |
保険 | 14,000 |
交通・通信 | 40,000 |
教育 | 7,500 |
教養娯楽 | 25,000 |
その他 | 44,500 |
このままではあまりお金も貯まらないので、無理のない範囲で消費支出を絞っていきつつ、賃貸住宅の相場に合わせた住居費を計上していくことにします。
居住地は、東京都心部から電車で1時間以内で車がなくとも生活ができる比較的利便性の高いエリアに居住地を定め、
2人世帯の場合は
- 40平米以上
- 駅から徒歩7分以内
- マンション
を条件に検索。月8万円の物件だと無理なく探せることがわかりました(さいたま市の中心部にほど近い駅が最寄り、など)。利便性が高いエリアに住む一方、車は持たない選択をしました。
以下がその消費支出内訳と月間消費総額です。
2人世帯 | 単身世帯 | |
消費支出 | ¥200,000 | ¥135,000 |
住居 | ¥80,000 | ¥55,000 |
水光熱 | ¥15,000 | ¥12,000 |
食 | ¥55,000 | ¥40,000 |
家具 | ¥0 | ¥0 |
被服 | ¥5,000 | ¥3,000 |
保険 | ¥0 | ¥0 |
交通・通信 | ¥6,000 | ¥3,000 |
教育 | ¥0 | ¥0 |
教養娯楽 | ¥20,000 | ¥12,000 |
その他 | ¥19,000 | ¥10,000 |
年間計 | ¥2,400,000 | ¥1,620,000 |
2人世帯(賃貸)の場合、月20万円となりました。
単身世帯の場合は、5万5000円の賃貸住宅とし、その他の項目も適宜調整、月間13万5000円となりました。
世帯年収500万円と400万円いくら投資に回せるか?
次に年収に応じて、年間いくら投資に回せるかを計算します。
年収によって、消費意欲に変化はないものと仮定します。
年収500万円の場合、手取り収入は約400万円、
年収400万円の場合、手取り収入は約312万円、
となります。
その結果、
年収500万円世帯の場合、年間投資額は
2人世帯賃貸:160万円
単身世帯賃貸:240万円
年収400万円世帯の場合、年間投資額は
2人世帯賃貸:70万円
単身世帯賃貸:150万円
となります。
FIREの基準、25倍の根拠とは
ここでFIREの基準として挙げられる「25」という数字について補足します。
これは、FIRE開始時の資産額の目安として、年間生活費の25倍に設定しようという目安です。
年収の25%と考えている人もいるかもしれませんが、正しくは年間の消費額です。年間利回り4%で資産を運用することを前提にすれば、年間消費支出が投資元本の4%以内に抑えれば、資産が目減りすることなく暮らし続けることができるという理屈に基づいています。100%/4%=25(倍)です。
ただし、金融所得税が20%かかるので、実際はその金額では暮らせません。
本稿では1%ポイント分だけリスクをとって利回り5%で計算することにします。そこから20%の税金を引くと実質4%です。
今回はできるだけ最短でのFIREを目指すということで、25倍未満となっています。
何歳でFIRE? その前提条件
いよいよ、年収と諸条件に応じて何歳でFIREできるかをシミュレーションしていきます。
なお、FIRE後の生活費は、住居費が少し安いエリアに引っ越す、掛け捨ての保険に入る、食費は時間ができたため自炊や作り置きを頑張って少し安くすることにします
その結果、消費支出は以下のようになります。
また、FIRE後は、年金が支給されるまでは毎年、その消費支出を年額に直したものに金融所得税を加味した金額を資産から取り崩すことにします。
なお、年金支給年齢は69歳とし、年金は夫婦世帯は年216万円(手取り収入200万円)、単身世帯は年120万円(手取り収入110万円)として、その分だけ取り崩すお金が減ることになります。
平均寿命である84歳まで投資資産がプラスであればOKとします。
年収500万円、何歳でFIREできるか
シミュレーションの結果
まず年収500万円世帯は、以下の通りとなりました。
年収500万円 | 2人世帯 | FIRE時資産 | 単身世帯 | FIRE時資産 |
退職金ゼロ | 47歳 | 4300万円 | 41歳 | 3600万円 |
500万円 | 46歳 | 4400万円 | 40歳 | 3700万円 |
1000万円 | 44歳 | 4200万円 | 39歳 | 3800万円 |
31歳から投資をスタートし、退職金ゼロの場合は2人世帯は47歳で実現、退職金が1000万円あれば44歳で可能でした。つまり最短で14年。
一方、単身世帯の場合は退職金ゼロの場合41歳、退職金1000万円の場合は39歳で可能でした。つまり、単身で、退職金がそれなりに出れば10年未満でFIRE可能ということです。
FIRE時の金融資産は2人世帯の場合は4200〜4400万円、単身世帯の場合は3600〜3800万円となりました。
年収400万円、何歳でFIREできるか
年収400万円世帯の場合はどうなるでしょう。
年収400万円 | 2人世帯 | FIRE時資産 | 単身世帯 | FIRE時資産 |
退職金ゼロ | 55歳 | 3500万円 | 45歳 | 3400万円 |
500万円 | 53歳 | 3500万円 | 44歳 | 3600万円 |
1000万円 | 51歳 | 3600万円 | 42歳 | 3500万円 |
退職金ゼロの場合は2人世帯は55歳で実現、退職金が1000万円あれば51歳で可能でした。つまり最長で25年かかりますが、一応「早期退職」には間に合いました。
一方、単身世帯の場合は退職金ゼロの場合45歳、退職金1000万円の場合は42歳で可能でした。
FIRE時の金融資産は2人世帯の場合は3500〜3600万円、単身世帯の場合は3400〜3600万円となりました。
贅沢しなければ可能だが、落とし穴も
以上、シミュレーションした結果では、消費支出をコントロールすれば、年収400〜500万円世帯の、単身者だけでなく、夫婦2人世帯でも完全FIREが理論上は可能であることがわかりました。
一方で、今回の試算では、FIRE時期が1年早いだけで、資産枯渇年齢が5年以上も早まる場合がありました。若くしてFIREすればするほど、その可能性は高まります。
結論として、理論上は年収400〜500万円世帯でも可能です。しかし、全く遊びがないことも確かで、数年退職時期を遅らせるてバッファーを確保するか、数年は月に数万円の収入を得るサイドFIREを行う方が安心だと思います。
また、平均利回り5%の平均には何の確実性もありません。金融資産が多いFIRE直後に高い利回りを得られれば、元本が多い分だけ、資産が枯渇する時期を遅らせられますが、逆にその時期に利回りが低ければ、人生の後半にお金が枯渇することになります。その意味では比較的安定している配当収入を一定の拠り所にすることが重要で、そのためには必要な金融資産はさらに増えるということになります。